日本では国民食として長らく愛されているラーメン。マーケティングリサーチ会社の富士経済によると、2023年の国内ラーメン市場は前年比7%増の4385億円というが、必ずしも好調とは言えないようだ。全国紙経済部記者が説明する。

「ラーメン市場はコロナ禍の影響で2020年に大きく落ち込んでおり、現在は回復に向かっているとはいえ、コロナ禍前の水準には達していません。一方で、店舗数は23年の時点ですでにコロナ禍前を上回る約1万6200店にまで膨らんでおり、厳しい競争状態にあると言えます」

 東京商工リサーチの調査によれば、23年度に負債1000万円以上を抱えて倒産したラーメン店はこの15年間で最多となる45件。休廃業・解散に追い込まれたラーメン店も同様に最多となる29件にのぼったという。

 実際に起きている“閉店ラッシュ”――それはこってり系スープを特徴とし、全国で200店舗以上を構える人気チェーン、トロトロのこってりラーメンでおなじみの『天下一品』でもそうで、新宿歌舞伎町店や恵比寿店、池袋東口店など都内6店舗が24年6月をもって閉店となるというニュースはラーメン好きに衝撃を与えた。

 いったいラーメン業界で何が起こっているのか。小売・サービス業界に詳しい経営コンサルタントの岩崎剛幸氏が、弊サイトの取材に対して背景事情を説明する。

「まず、閉店ラッシュの大きな理由のひとつとして、近年の食材や水道・光熱費の高騰、さらに人件費の上昇が直撃していること。ラーメン市場は個人店や小規模チェーンが非常に多く、とくに1店舗でやっている個人店などは元々の売り上げが小さいので、こうした値上がりラッシュで続けていけなくなった店が増えているのでしょう。

 ラーメン店は少ない開業資金で参入しやすいのが特徴ですが、その結果として競合がとにかく多いことも背景にあります」(岩崎氏)

 さらにコロナ明けの“反動”も追い打ちをかける。

「これはラーメン店に限らない話ですが、コロナ禍の人流制限で苦境に立たされた飲食店の多くが実質無利子・無担保の“コロナ融資”を受けており、その返済が23年から始まっています。食材費などの高騰に加えて、この返済も資金繰りを圧迫している。このWパンチによる倒産は今後さらに増えていくのではないでしょうか」(前同)