■番記者が見た、大谷翔平に足りない唯一の部分
水原元通訳による一大事件が自身の身に降りかかった一方で、その困難にも動じない精神力。そんなスーパースターを番記者として身近で眺めてきたからこそ、大谷選手から感じる成長の余白もあるという。
「メディア対応が他の選手と比べて少ないのは事実です。アメリカの野球記者協会も“取材対応の少なさ”を問題視し、キャンプ前にはMLB、ドジャース、日米記者がそれぞれ話し合いの場を持っています。
メジャーリーグではどんなスター選手でもクラブハウスでマンツーマンの取材ができます。大谷選手の場合は数日に1回、囲み取材があるかどうか。二刀流で多忙とは言え、30球団全選手が同じ条件で取材を受けてプレーしているのに大谷選手だけ特別扱いというのは、周囲からも奇妙に映るでしょう」(柳原記者)
また、アメリカではトップアスリートがスポーツだけをしていては評価をされない文化的な側面もあるそうだ。
「アメリカではNBAプレイヤーであるレブロン・ジェームズ(39)やテニス選手のセリーナ・ウィリアムズ(42)が積極的に人種差別に反対する発言を繰り返していますよね。大谷選手はメジャーリーグを代表するプレイヤーですし、影響力もある。まだ大谷選手は望まないかもしれませんが、今後はその影響力を、社会のために使うのも一考かもしれません」(前同)
シーズン前には真美子さんとの結婚も発表し、大人のプレイヤーへの階段を駆け上がる大谷選手。フィールド上では走・攻・守の三拍子が揃ったプレーを披露しているが、フィールド外での発信力も身につけ、さらなるスタープレイヤーの地位を確立するか。
柳原直之
1985年9月11日生まれ、兵庫県西宮市出身。関学高を経て、関学大では準硬式野球部所属。08年に三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、転職し、12年にスポーツニッポン新聞社入社。遊軍、日本ハム担当を経て18年からMLB担当。大谷翔平を取材して11年目を迎える。