■『虎に翼』に必須だったはる・石田ゆり子の存在

「今週の寅子(伊藤)が家族の同意なしに道男を預かろうとしたエピソードのように、本作は、寅子が何かに向かって突き進んでいく物語ではなく、ひたすら紆余曲折を繰り返していくのが特徴です。そんな物語で、はる(石田)はたびたび向かうべき方向を寅子に示す重要な役割を担ってきました」(ドラマライター/ヤマカワ)

 寅子は、苦労して弁護士資格を取得したのに、妊娠をきっかけに法律事務所に辞表を提出。結婚を拒否していたかと思えば、社会の信用を得るために優三(仲野太賀/31)と結婚。その後、優三との愛が芽生えるが、戦争によって失ってしまうと紆余曲折の連続だ。物語自体が不安定なところもある。

「その不安定さは朝ドラヒロイン定型を外すため、あえて狙ったものでしょうが、そのままでは物語が迷走してしまう。そこで、ヒロインを導く存在が必要なのですが、それが母・はるで、法科進学を後押しし、終戦後、夫を亡くして心がズタズタになった寅子を励ました。石田はやわらかさの中にも、しっかりとした芯を感じさせる女性を演じることができます。寅子と家族たちの師のような立場のはるは、まさにはまり役だったといえるでしょう」(前同)

 そんな頼れる存在だった、はるが退場してしまった。はるが10年先の猪爪家まで見すえていた日記のとおり、寅子が大黒柱として、花江が主婦として、2人で支え合っていくのだろうが、それだけでは、寅子の直情的な振る舞いを軌道修正するのは難しそうだ。

 次週予告では、三男を連れて家を出ていた梅子(平岩紙/44)との再会シーンに加え、「俺には分かってたよ」と、戦死したはずの兄・直道(上川周作/31)の口癖が聞こえてきた。誰がはるの代わりに寅子を支えるようになるのか、今後の展開に注目したい。