■外国人観光客料金の設定で大事なこと

 世界ではすでに導入され始めている観光客への特別価格設定。観光立国を謳う日本の体制が他国に比べて遅れているのは認めざるを得ない――と前出の岩崎氏も話す。

「昔の日本は世界的に見ても物価は高かったし、極東の島国。気軽に外国人が観光に来られるような場所ではありませんでした。

 観光地としてもスポットは限定的で、日本に観光国の自覚がなかったのはたしかでしょう。ただ近年の和食ブームや、世界遺産をはじめとした風光明媚なスポットもたくさんあることが知られ始め、国も観光立国をアピール。さらに円安が追い風となって、世界中から人が集まるようになりました。それなのに、観光客を受け入れる経験、ノウハウが追いついていない」(岩崎氏)

 京都では、市バスがあまりにも観光客で混雑するようになり、市民の足に影響が出ていることを受け、6月1日から東山・金閣寺方面など観光需要が多い路線を増便。そのほかにも、土日祝限定で市内の観光地を巡る「観光特急バス」(大人500円・子ども250円)のサービスを始めた。

 増加の一途をたどる外国人観光客。日本もようやくその対策に腰を上げたといったところだが、岩崎氏は「外国人観光客料金の設定は、納得性を高めることが大事」だと言う。

「観光スポットの入場料・見学料に外国人料金が設定されるのは保全維持という意味でわかりやすい。その一方で、生活圏への対策となると、京都のように、市民生活用のバスと観光客用のバスの2路線を作り、入り口から分けてしまうというのも一つの解決策です。

 また、旅館などにおいても観光客には何かお土産や特別料理を提供するなどして、明らかな付加価値をつけて宿泊料金を高くするといったプランが考えられます。あくまでもお客さまに喜んでいただく価値のための高い値段設定だと納得してもらえることが大事です」(前同)

 姫路城が今後、高額な外国人観光客料金を採用すれば一気に追随するところが現われそう。議論はまだまだ始まったばかりだ。

岩崎剛幸
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。著書に『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)
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