■なぜ、日本は「観光客料金」が「外国人も同じ」なのか
実際、「世界一入場料が高い遺跡」として知られているヨルダンのペトラ遺跡は現在50ヨルダンディナール(JOD)で、円換算にして約1万1千円(6月24日時点、以下同)。ちなみに地元民は1JOD(約225円)だという。ほかにもインドのタージ・マハルは地元民50ルピー(約95円)のところ、外国人観光客は1100ルピー(約2100円)と22倍だ。エジプト・ギザのピラミッドやペルーの世界遺産・マチュピチュも地元民と外国人観光客で見学料に数倍の開きがある。
なぜ、世界の名だたる観光地では外国人観光客と地元民で異なる価格設定がなされているのか。反対に、なぜ日本では地元民も外国人観光客も料金が同じなのか。観光客料金を設定する意義とはなんなのか。弊サイトでは、経営コンサルタントの岩崎剛幸氏に話を聞いた。
まず岩崎氏は、日本人特有の考え方として、「同じサービスで価格を分けるという発想がなかった」ことを指摘したうえで、“観光客料金”導入のメリットを挙げる。
「文化遺産、自然環境を維持するという観点からは、観光客がたくさん来れば当然メンテナンスにお金がかかります。ところが、日本人は地元民と観光客を区別せず、できるだけ公平にサービスを提供するのが美徳、という意識が強かったんですね。
ただ、ここまで観光客が増えるとそうもいかない。たとえば木造建築では必要以上に人が入ると耐久性の懸念も出てくるでしょうし、補修などの負担も増える。各地で地元の人たちの通常の生活に影響が出る現状もあります。文化・自然と市民生活を守るという2点において、観光客料金として上乗せしたお金を払ってもらうのは理にかなっているのです」(岩崎氏)
海外では、前述のように観光客料金を設定するケースのほか、「観光税」を徴収するケースもある。スペイン・バルセロナやブータンなどでは、観光客は宿泊の際に別途税金が加算される。インドネシア・バリ島では、2024年2月から入国前に観光税を支払わなくてはいけなくなった。