■酒の買取専門業者「偽物も珍しくなくなった」

 世界中でジャパニーズウイスキーの争奪戦が繰り広げられるなか、前出の酒買取専門店であるJOYLABでは買取の相談件数も買取価格も上昇傾向だというが、担当者は「偽物が持ち込まれることも珍しくなくなった」と明かす。

「10年ほど前までは見かけなかったのに、買取価格の高騰と比例して偽物の数はじわじわ増えていて、ここ4、5年ぐらいはどの業者も警戒しているところです。高級銘柄だけでなく、一般的な銘柄でも危ないという認識です」(前出のJOYLAB担当者)

 本物のボトルをオークションやフリマサイトなどで手に入れ、そこに適当な液体を瓶詰めした後、精巧に蓋をするケースもよくあるというが、査定側が飲んでみるわけにもいかない“未開封”の酒。本物かどうかの見極めは、どのように行なっているのか。

「ウイスキーの色味や振った時の泡の立ち方、キャップシールなどを精査しますが、偽物を作る側の手口もどんどん巧妙になっていて、見分けづらくなっているのは確かです。100%すべての偽物を防げている業者はいないのでは」(前同)

 偽物情報は日々社内で共有し、知見を溜めていく。JOYLABの担当者も「泥臭く実体験を繰り返すしかない」と語る。しかし、一旦買い取った後に偽物だと判明したり、その買い取り商品を販売した客から偽物なのではと指摘されたりすることもあるのが現実だという。その場合は返品を受け付けることになるそうだ。

 なお、JOYLABで買取するのは、未開封の酒のみ。業者のなかには開封済みの商品の買取も行なう業者もあるというが、それは「空ビン」に値がつく可能性があるからだだという。

「中身の信用性が担保できない開封済みの酒は結果的に空ビン扱いになります。弊社のポリシーとして、空ビンは買取対象外です。空ビンを買取り、それを市場へと流せば、今回の事件のように偽物を作る“種”をまいてしまうことになるためです」(同)

 茨木県警に逮捕された男が質店へと売ろうとした『山崎25年』の買取価格は、本物なら7~8年前まで25万円ほどだったものが、今や100万円超えとのこと。あまりにも高騰化した本物に交じり、偽物も――ジャパニーズウイスキーの世界は今、過熱している。