日々変化する食のトレンド。テレビなどが取り上げて人気が過熱し、行列店が続々とできた頃にはブームは静かに去り始め、気づけば専門店が消えていく。そんななか、2年ほど前から始まっているドーナツ人気はまだまだ活況だ。

 若者文化や流行の最先端に詳しいトレンドアナリストの太田まき子氏が弊サイトの取材に答える。

「福岡発祥のベーカリーが2022年に東京・中目黒にオープンした『I'm donut?(アイムドーナツ)』をきっかけに、従来のザクザク生地とは一線を画した、フワフワしっとりした食感の『生ドーナツ』が人気に。後に続けと生ドーナツ専門店が続々とオープンしたほか、従来のドーナツもあらためて脚光を浴びるなどドーナツブームが巻き起こりました」(太田氏)

 ドーナツ専門店チェーンとして全国的に親しまれている『ミスタードーナツ』の売上も、一時は低迷が伝えられていたが22年度に大幅回復。現にミスタードーナツの運営会社であるダスキンが、23年3月に公表したフードグループの売上高は214億円で、前年同期の199億円から大幅に増加しているのだ。また、23年にはTBS系『マツコの知らない世界』でドーナツが特集されるなど、ドーナツ業界には追い風が吹いている状況だ。

「23年は『アイムドーナツ』の新店舗が東京・表参道にオープンし、今でも行列ができるほど人気。また同年の12月に1号店が誕生した生ドーナツ専門店の『UNI DONUTS』は24年に入って、東京の吉祥寺や神楽坂、さらには横浜や札幌などに続々と新店をオープンさせており、生ドーナツ人気はまだまだ続きそうです」(前同)

 当然、“ドーナツ戦争”はますます激化。バンズの代わりにドーナツを使用したハンバーガー『ルーサー・バーガー』や、衣をつけて揚げることで外はカリカリ、中の生地はフワフワとなる『台湾ドーナツ』など、ヒットの最前線では“ドーナツの多様化”も起きている。

 こうしたなかでトレンドアナリストの太田氏がいま注目しているのが、韓国発祥のドーナツだという。

「ツイスト状にねじったものを揚げた“クァベギ”という韓国ドーナツの専門店『BONTEMPS(ボンタン)』が23年12月に大阪・アメリカ村でオープン。24年6月に東京初進出として中目黒にオープンした際には、TBS系『Nスタ』やフジテレビ系『ノンストップ!』といった情報番組がこぞって取り上げました」(同)

店構えもシャレている『ボンタン』中目黒店 ※撮影/編集部

 この店がここまで注目を集めたのは、人気K-POPグループの影響も大きいのだとか。

「韓国の8人組ボーイズグループ、“スキズ”ことStray Kidsですね。ファンミーティングに来たファンに彼らが配ったことで有名になり、日本初進出となるアメリカ村本店がオープンした際は最大3時間待ちとなる大行列ができました」(同)

 味も好評だ。

「クァベギは韓国で昔からある定番のお菓子でしたが、近年はもち米などを用いた進化系クァベギがその新たな食感で日本でも注目を集めていて、23年に大手コンビニのセブンーイレブンやローソンが発売したことも。ボンタンのクァベギはもち米ではなく天然酵母のルヴァンを使っていて、風味もよく、もちもちしながらも、しっとり感もあって美味しいんです」(同)

 加えて、個性的なラインナップも光る。

「ティラミスクリームがたっぷり載った『ティラミス』(520円・税込・以下同)を始めとして“映える”見た目もいいし、ベーシックな『シュガー』(300円)もある一方で、バジル風味のクリームとドライトマトを合わせた『バジルトマト』(520円)や、焦げ目のついた焼きとうもろこしがインパクト大な『コーンクリーム』(570円)といった“しょっぱ”系のお食事ドーナツもあったりと、品ぞろえも魅力的です」(同)