■「取りやすい生理休暇」に求められる“変革”

 昭和60(1985)年に男女雇用機会均等法が制定されると、いよいよ生理休暇は形骸化してゆく。前出の女性産業カウンセラー・阿久津さんは、「企業側も女性側も、生理事情について目を背けてきたのでは」と話す。

「企業側にしてみると、安定した労働力がほしいのが本音。長らく女性の妊娠・出産は“リスク”と捉えられてきました。また男性と同じ土俵で戦いたい女性にとっても、生理を含めた女性特有の身体事情は働くうえで“弱み”になってしまうと考え、生理は隠すべきものという意識のもと、主張できないケースがまん延してきたのではないでしょうか」(阿久津さん)

 平成27(15)年には女性活躍推進法が制定。就労状況・条件の男女差を解消し、女性が活躍できる社会を実現することが目標とされた。それでも下がり続ける生理休暇の取得率に、阿久津さんは、「社会全体としてジェンダーフリーに進み、ナチュラルに女性が働くようになってきたからこそ、女性性を理由に欠勤したくないという女性は多いのでは」とみる。

 今回話を聞いた大手メーカーに勤める30代の女性は、会社に生理休暇制度があるのは知っているが、取得したことはないと話す。「生理休暇をとっている女性社員に対して、男性の管理職社員が“また生理か~、使いづらいな”などと心無い話をしているのを聞いたことがあり、自分がそういうふうに言われたらイヤだなと思った」と複雑な心境を明かす。金融機関で働く20代の女性も、「男性に“あいつ生理だな”と思われるのは気持ち悪い」と言う。

 では、今後、生理休暇の取得率が「上がる」ことはないのか。阿久津さんは、「このままだと上がらないんじゃないかと思います」としたうえで、「身体の条件が男女で違うのは事実なので、男性が女性の生理について理解していただくことが今後重要になっていくのは確かです」と、男性側の意識改革の必要性を訴える。

 同時に阿久津さんは、「“生理休暇”という制度そのものがナンセンス」だとも指摘する。

「そもそも女性の間でも生理の重さにはかなり個人差があるし、男性だって具合が悪いこともあるでしょう。“生理休暇”というネーミングも取得しづらい一因になっていますよね。生理を含め、誰でも“体調不良休暇”を取得できるようにできる体制が理想的だろうとは思います」(前同)

 実際、生理休暇だけでなく、育児や介護関係など、生活関連の休暇を誰でも取得できるように「ライフサポート休暇」として制度を整えたり、かつて無給だった生理休暇を、有給かつ名称を変更することにより取りやすく工夫したりする企業は出てきている。時代に合わせて、取りやすい休暇制度へのシフトチェンジが求められている。

阿久津まどか
1996年 東洋大学 文学部 教育学科 卒業
心理カウンセリングを行うほか、後進の育成にも力を注ぐ。また、企業や団体などでの講演活動も行っている。プライベートでは一児の母。日本女性心身医学会会員、中央労働災害防止協会登録心理相談員、(社)日本産業カウンセラー協会認定産業カウンセラー