■モズクの収穫量は普段の半分以下……

 苦しい環境下で再開された輪島の海女漁。漁の再開自体はできたものの、港の修復は全く進んでいないそうだ。

「冷却設備の修理どころか、地震の影響で港が隆起してしまい小舟を岸壁につけられない。岸と海に浮かぶ小舟の間には2〜3メートルほど高さに差があり、荷上げどころか船の乗り降りもままなりません。地震の後に港へと設置した浮桟橋があるんですが、海女さんたちはそこから船へと乗り降りしとる状況です」(前出の門木さん)

 徐々にしか進まない復興。そんな過酷な状況の中でも海女漁に励む能登の女性たちは、漁をするにあたってある約束事を設けているという。

「モズクは現在、1人が収穫できるのが15キロまで。普段はその倍の30キロはとるんだけど、港には冷却設備もないから今日、明日と分けて市場に出荷するわけにもいかないしね。モズクも不作だし、なかなかしんどいわ。今後はサザエやアワビ、ウニの海底での状況を調査して漁ができそうか、判断していく形だね」(前同)

ウニの海底での状況を調査 ※画像は「輪島の海女漁保存振興会」の公式インスタグラム『@wajima_mermaid』より

 漁は再開できたものの、地震の影響により大きく変化した漁港周辺の環境。それでも門木さんは「漁師さんはもっと酷い」とため息混じりに話す。

「港が地震の影響で浅くなったもんで、漁船が海へと出せないんだわ。海女さんが乗る船は小さいから海へと出られるんだけど、漁師さんの船は船底が海底についてしまって、とても沖合へは出られない。それでもみんな生活があるからと、別の仕事をして生計を立てとる状況です」(同)

 海女漁の再開は始まったものの、日常を取り戻すのはまだまだ先になりそうな能登半島。それでも、港町で暮らす人々は懸命に前を向く。