■マグロ漁船新人船員の定着率は7割、40代での挑戦者も

 新人乗組員のリクルート活動の一環としてイベントに参加している企業も手応えを感じているようだ。太平洋やインド洋を主戦場にマグロの遠洋漁業を営む、焼津まぐろ漁業株式会社の大野武往部長がこう話してくれた。

「ここ3〜4年でイベントなどを通じて10人ほど採用しました。定着率は7割ほど。仕事が続くのは、水産高校の卒業生が多いです。一般の高校を卒業した子もおりますが、“仕事があわない”と退職する子も少なくありません。志がある子はやはり長く続くなという印象ですね」

参加者を大漁旗でお出迎え ※撮影/編集部

 イベントへと実際に足を運び、プロの漁師の話を聞いた学生はどの様に感じたのだろうか。都内の有名私立大学のアニマルサイエンス学科に通う大学1年生(18)の男子生徒が言う。

「あばれる君(37)が出演していた『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)を中高生のころに見て、無人島や魚に興味を持ち大学の学部も自然科学系の分野へと進学しました。就職活動はまだ先ですが、将来の選択肢の1つとして見たことのない世界が見られる遠洋漁業の漁師も考えています」

 宮城県内から、中学3年生(14)の男子生徒と一緒に説明会へと足を運んだ母親が語る。

「保育園のころから息子は漁師になりたいと言っていました。その夢が10才ごろになっても変わらないので、どうやらこれは本気なんだなと思いました。高校は大型船舶の職員は必須となる海技士の資格を取得できる、千葉の館山にある海上技術学校の受験を考えています」

 イベント会場へと職探しに出向いたのは、若者だけではない。10年間水産加工の工場で「秋刀魚の開き」などを製造してきた男性志願者(40)が、マグロ漁船への熱意を話す。

「昨年の末ごろから真剣に“マグロ漁船に乗りたい”と考える様になりました。妻には“やれんの〜”とおちょくられ、娘2人にも“その年齢でムリだよ〜”と言われましたが私は諦めません。マグロ漁師という自分の夢を叶えるつもりです」

 前出の渡木一等航海士が、マグロ漁船に欲しい人物像を話す。

「漁船・漁業界はマグロ船に限らず、どこも人手不足。“まずはやってみたい”という気持ちを持った人に来て欲しい。あとは、外国人の船員さんとのやりとりもあるので前向きに明るく取り組んでくれる人が良いですね。一緒にマグロをたくさん獲って稼ぎましょう」

 一攫千金の夢があるマグロ漁船。イベント会場へと集まった面々は、マグロドリームを手にできるか。