■バスや車での移動にも危険がいっぱい

 乗り物で移動する場面でも、気を緩めてはいけない。

「バスに乗る際は、気を付けるべきです。待合室も屋根もないバス停だと、直射日光を浴びながらバスを待つことになります。また、乗り込んだ車内は涼しくても、目的地で降車するとまた暑い。急激な温度変化は身体に負担をかけます」(前出の多胡氏)

 バスだけではなく、マイカー移動にも危険がはらむ。

「駐車していた車に乗った瞬間は温度と湿度が凄いことになっています。ダッシュボードやシートから輻射熱が発せられ、体温が上昇してしまうんです」(前出の谷口医師)

■屋内プールに入っていても熱中症になる

 今夏は、夏休みのプール開放を中止する学校も相次ぐ。日差しが降り注ぐ外だけでなく、屋内プールでも油断禁物だ。

「プールは湿気も高く、泳げば汗をかき、体温も上がります。水温が33~34℃を超えると、熱中症のリスクは高まります。というのも、水温33℃以下であれば内の熱が水中に逃げるのですが、34℃を超えると、水中に熱が逃げず、体内にこもってしまうから」(前同)

 水中でのリスクについては、多胡氏も「水分補給も忘れがち」と補足する。いかなる場合においても、こまめな水分補給が必須だ。

 地球環境の変化もあり、今の時代は“昭和の夏”とは環境がまるで違う。多胡氏がこう付け加える。

「昔は真夏でも夕方になれば涼しくなることもありましたが、今は猛暑日と熱帯夜が何日も続きます。体も休まるタイミングがない気象環境なのです」

 熱中症から命を守ろう。

谷口英喜(たにぐちひでき) 済生会横浜市東部病院患者支援センター長。医学博士。熱中症・脱水症に関する報道でマスコミに多数出演。専門は、麻酔学・集中治療学・周術期管理・栄養管理・経口補水療法・脱水症対策など。

多胡安那(たごあんな) ウェザーマップ所属。TBS NEWS、Yahoo天気動画などに出演中。資格は小型船舶免許1級、防災士、フードコーディネーター、夜景鑑賞士、宝石鑑定アドバイザー、熱中症予防管理者など。