■リアルな人間模様に共感が集まる

 また、テーマ上やむを得ないことではあるが、『海のはじまり』は全体的にシリアスで、“重い”と感じてしまう視聴者がいる一方で、『西園寺さん』は演出も含めてコメディ要素が強めのため、肩の力を抜いて楽しめるところがある。

「単にコメディ色が強いだけはありません。『西園寺さん』は育児や家事に疲れてしまう親の姿や、それを悪いことだと捉えてしまい罪悪感に苛まれる親自身、そういった視聴者の共感を呼ぶ描写が、実に丁寧に描かれているんです。

 この点で言えば、『ブラックペアン』はあえてリアリティを薄めてコテコテの悪役を出すなどエンタメ色が強めの作風ですから、“登場人物に共感しやすい”という点では、『西園寺さん』は優れていると言えるかもしれません。第2話は、“嫌なリアリティのある父親”が話題にもなりました」(前出の制作会社関係者)

『西園寺さん』の第2話では、西園寺(松本)と父親・康平(浅野和之/70)のやり取りが話題となった。アポなしで家を訪れてきた挙句に楠見(松村)との同居に一方的な意見を押しつけてることに西園寺が怒り、「自分の考えでしか話をしようとしない。違う考えの人には耳も貸そうとしない。お母さんの時だって、全然話を聞こうとしなかった。だから捨てられたんでしょう!」と、追い出すシーンがあったのだ。

 台詞だけでなく“アポなしで訪ねてきて、家事嫌いの娘に食べるのに手間がいるメロンを差し入れする”という悪意はないが、無神経な父親の行動は非常にリアルで、

《手土産で、切らなきゃ食べられないメロンを2つも持ってくる父親がリアルだったなー》
《父親のとこうちの親みたいで結構マジでムカついたw》
《父親来て西園寺さんが色々言われるシーンがアラサー独身女にはめちゃくちゃ刺さってな………あれだけ毎日懸命に生きて、楠見くんとルカたんを放っとけなくて助けてあげた優しさなのに歳上・未婚・女というだけでああいう言葉を親に投げられる西園寺さんの背中が小さくて苦しかった……》

 と共感の声が殺到したのである。

※画像は『西園寺さんは家事をしない︎』の公式X『@saionjisan_tbs』より

 そして、そういったコメディとシリアスをバランスよくこなせるのは、松本と松村の演技力があってこそ。

《基本的にコメディで軽く楽しく見られるけどその中に家族や周りの人たちとの関わり方や仕事への取り組み方とか誰もが抱える少しの問題を丁寧に入れて気づきを与えてくれる深みを松村北斗と松本若菜2人のシリアスもコメディもできる演技力が支えていてバランスが良すぎる》
《松本若菜さんの美人でチャーミングでパワフルで人から好かれる姉御肌、だけど過去のトラウマと葛藤する姿が、このドタバタコメディを上手く成立させてる感じがする。見ていて気持ちがいいですね》

「シリアス過ぎずに見やすいし、それでいてキャラクターの行動は男女問わず、育児や家事に悩む人に刺さる。だからこそ『西園寺さん』は、前評判の高かった『ブラックペアン』と『海のはじまり』を猛追しているということでしょうね。今後も、24年夏ドラマの“新本命”として、大きな注目を集めていくのではないでしょうか」(前同)

 松本と松村、演技派の2人がメインを張る連続ドラマ『西園寺さんは家事をしない』がアツくなってきているようだ――。