■業界注目の「NPB商品」とは
さまざまな商品が棚にならぶコンビニ店内のなかでも、“必需品”ではない菓子類はどうしても消費者が手を取るのは後回しになりがち。そのことを考えると、やはり「手軽さ」「安さ」は外せない要素で、コンビニも近年はコスパの良さを売りにするPB(プライベートブランド)の開発に力を入れている。しかし、前出の渡辺氏は「PBの値段も上がってくる」と見る。
「コンビニ側からすると、利益率は当然PBの方がいい。ただPBが商品価格を抑え、NB(ナショナルブランド)より安く消費者へと提供できる理由には、閑散期に工場を回すとか、CMを入れないといった企業努力もありました。しかし輸送費とか輸入原材料代金が値上がるとどうしようもありません。時期が遅れているだけで、必ずPBも値上がります」(渡辺氏)
渡辺氏によれば、PBも安さを第一アピールにしなくなっているという。
「PBの展開にもフェーズがあって、PBが拡大し始めた1980年代半ばの“PB1.0”では、とにかく安いことが売りでした。それが、セブン-イレブン『金のシリーズ』に代表されるような商品が出回り始めた07年頃からは、安さではなく付加価値のある商品と販売力で存在感を示してきました。これが“PB2.0”です。
今の状況は、“PB3.0”。Z世代向けなどターゲットに合わせて商品を作る戦略にシフトしています。NBとPBのいいとこ取りをした“NPB商品”として、ハーゲンダッツのセブン-イレブン限定味、ファミリーマート限定味のような商品も出てきています。消費者も、限定的な価値があるものにはきちんとお金を払ってくれますよね」(前同)
相次ぐ値上げ情報。メーカーや販売側も、知恵をしぼって「価値」を提供しなくては生き残れないようだ。
渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
1967年生まれ、浜松市出身。 東洋大学法学部経営法学科卒業。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長・スーパーバイザーを経て約16年間バイヤーを経験。日用品を中心に、さまざまなメーカーと約780品目の商品開発に携わる。
顧問、講演、メディア出演など幅広い活動を行っており、現在フジテレビ『LiveNews α』レギュラーコメンテーター。Tokyofm 『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ、YouTube 『やらまいかビジニュース』。著書に『コンビニが日本から消えたなら』(ベストセラーズ)、『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版、馬渕磨理子との共著)等。