■登校日と課外活動が違う、熱中症対策で水泳中止も
「昭和の夏休み」では、登校日は久々に友達に会えるイベントだった。
「もともと登校日の実施は非行の防止、安否の確認などの目的がありましたが、自治体や学校によりますが、やらないところが増えています。ただ、新学期開始の1週間前などに登校日を設定し、そこで宿題の提出をさせる例もあります。これには、新学期のスタート時に慌てないですむ、読書感想文やポスターなどはコンクールへの作品提出に、余裕を持って準備できるといった利点があるんです」(前出の教育ライター・猪狩はな氏)
また、昭和の小学生にとってスペシャル度が高かったのがプール登校日だ。
ただ、当時はプールサイドでの日光浴の時間が設定された一方で、これといった水分補給の指導もされなかった。今では信じられないが、当時は熱中症対策がほとんどスルーされていたのだ。
「水泳だけではなく、学校での夏休み中のスポーツの練習は、『熱中症警戒アラート』で実施するかが決まります。暑さ指数(WBGT)が31以上の場合、活動は中止です。そして近年は以前よりも“暑いため中止”が増加しています」(前同)
担任の先生が行なっていた水泳の指導方法にも変化が起きている。
「文部科学省が通知を出したことにより、自治体によっては水泳指導を近隣のスポーツクラブに委託したり、外部指導員に依頼したりする場合も出てきました」(前同)
また、児童の着用するスクール水着も様変わり。昭和式の濃紺の海パンやワンピース水着は姿を消したという。
「今は“ジェンダーレス(男女共用)”ですね。上下セパレートで着脱しやすく、男女問わずに短パン、ラッシュガードありのデザインのものが普及しています」(同)
■フードロス対策で“スイカなし”のスイカ割りに
海のレジャーも変わった。今は大人も子どもも楽しめるシュノーケリングやバナナボートなどのマリンアクティビティも人気を呼んでいる。
また、昭和には子どもが日焼けすることに価値が見出されていたが、令和では紫外線対策の徹底が常識だ。山や高原、湖畔などでのキャンプも様変わりしている。
「スポーツクラブやアウトドア施設が主宰するサマーキャンプが多様化し、自然体験プログラムとセットになったものや、英語キャンプや科学キャンプなどのプログラムも増えています。 一人っ子が多いため『子どもにいろいろな経験をさせたい』と考える保護者が、そこにコストを集中できるようです」(アウトドア雑誌編集者)
学校や地域で毎朝行なわれ、参加するとカードにスタンプを押してもらうシステムのラジオ体操は「昭和の夏休み」に不可欠なものだった。
しかし、少子化や共働き家庭の増加により、「令和の夏休み」には開催数も減少し、他のスポーツイベントに置き換わっていることもある。
夏の定番だったスイカ割りも令和流にアレンジされた。
「衛生面への配慮、さらにフードロスを防ぐために、スイカの代わりにビーチボールや紙風船が使用されることもあります。肝心のスイカは別途で用意され、最後にきれいに切ったものを食べるのがセットになってはいますが(笑)」(前同)
確かに叩き割られたスイカはぐちゃぐちゃになり、地面で砂だらけになることも……。令和式が合理的なことは確かだが、昭和・平成世代にとっては、味気ないような気もしてしまう。
時代とともに様変わりする夏休み。内容は変われど、子どもたちに多くの経験と忘れられない思い出を残していることは間違いないだろう。
猪狩はな
国語科教師の資格を持つ教師であり、教育系メディアのライターを兼務している。現在も教育現場への取材や、記事執筆の他、不登校支援学習サービスでの家庭教師や国語教師としての資格を生かしたイベントの開催など、幅広く教育現場に携わっている。