■ギャルの「風呂キャンセル」発信、背景に潜む”あざとさ”

 若者文化に詳しい原田氏は、ギャルが“風呂キャンセル界隈”であることを認める背景に、「自身のブランディングの1つに“ギャップ”の見せ方がある」と指摘する。

「インスタグラムはキレイで美しいものを載せるものという位置づけだけど、そればかりだと疲れてしまう。いわゆる“インスタ疲れ”が起きているところへ、2017年10月になってTikTokが上陸しました。

 動画ツールであるTikTokでは、ありのままの部屋や普段着といったカジュアルな発信が人気です。インスタで人前に出る時はしっかりしていることをアピールしつつ、TikTokで“実はズボラなところもある”というギャップを見せることで、親近感を持ってもらえます」(原田氏)

 また、女子が“風呂に入っていない自分”を発信する時は一定の法則があるという。

「“お酒を飲んだ後はお風呂に入らずそのまま寝る”、“人に会わないのでお風呂にも入っていない”など、限定した状況においてお風呂に入らないことがある、と言っているに過ぎません。あくまでも人前に出る時は見た目はキレイにしていることがポイントです」(前同)

 では、平成の「汚ギャル」との違いは?

「汚ギャルの時代はまだSNSがありません。濃いメイクを落とさない、コンタクトをつけっぱなしといっただらしない生活をするギャルについて、マスコミが“汚ギャル”と勝手に命名したものですよね。また彼女たちは広く共感を求めず、仲間内で“わかるー! だよねー!”といった形で絆を深めていた部分があります。

 対する“風呂キャンセル(界隈)”はSNSから発生し、同世代に共感を集めながら広まっていて、むしろ自発的にアピールする。汚ギャルとの大きな違いは“自虐”が入る点と、やはり“完全に不潔”なわけではないとことをほのめかす点です。“ズボラな時もある”ことをビジュアルのよい女子や女性タレントが発信することで、ぐっと身近になる。新種の“あざとさ”でもありますよね」

 あくまでも入浴の大事さは理解していながら、キャンセルすることもあるのが「風呂キャンセル」。だが、その言葉を“ギャップ”として使えるのは、《※ただしギャルに限る》かもしれないが……。

原田曜平
慶應義塾大学商学部卒業後、広告業界で各種マーケティング業務を経験し、2022年4月より芝浦工業大学・教授に就任。専門は日本や世界の若者の消費・メディア行動研究及びマーケティング全般。 2013年「さとり世代」、2014年「マイルドヤンキー」、2021年「Z世代」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「伊達マスク」という言葉の生みの親でもあり、様々な流行語を作り出している。主な著書に「寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生(角川新書)」「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?(光文社新書)」など。