猛暑日が続き、連日熱中症への注意が呼びかけられるなか、日本救急医学会は7月25日に「熱中症診療ガイドライン2024」を公表。2015年以来9年ぶりの改訂で、熱中症の重症度分類について重症のなかでも注意を要する「最重症群」が新たに加わった。それだけ暑さが危険視されているということだが、夏は屋外でのイベントも多い。

 ビアガーデンやBBQ、野球観戦などアルコールを伴う楽しみも多い夏。そんな季節における、炎天下での飲酒と熱中症の関係やいかに――。弊サイトでは、『猛暑対策BOOK 日本のヤバい夏を最新科学の力で乗り切る!』(小学館)の著者で筑波大学助教、運動生理学専門の藤井直人氏に“屋外×飲酒”でもたらされる体への影響を聞いた。

※画像は藤井直人公式X『@naotofuj』より

 まず前提として、熱中症のカギを握るのは「深部体温」と呼ばれるものだという。体の表面の温度を「皮膚温」、体の内部温度を「深部体温」と言い、通常、深部体温は皮膚温よりも高く、37度前後が目安とされる。この深部体温が上がりすぎると危険な状態になるそうだ。現に、熱中症の重症度分類でも「最重症」とされるのは深部体温が40度以上かつ重篤な意識障害がある場合とされている。

「お酒を飲むと体が火照り、体温が上がるようなイメージがあるかもしれません。しかし、お酒を飲むと発汗や皮膚血管拡張によって熱が発散されるので、深部体温は下がるという研究結果もあります。ですから、野外でお酒を飲んだからと言って必ずしも体温が上がるわけではない。

 ただ、お酒には利尿作用があります。尿が体内から出るということは、脱水を促進するということ。つまりは、炎天下で飲酒をして頻繁にトイレに行けば、熱中症のリスクも上がる。この点が炎天下で飲酒をすることのネガティブ要素なのです」(藤井氏)