■海洋散骨が“広がりきらない”理由

 後世に自身の墓を引き継ぐ必要がない樹木葬が人気になる一方で、まだまだ海洋散骨は広がってはいないという。前出の赤城氏は、「遺骨に対する執着がある」と指摘する。

「樹木葬は、文字通り樹木のまわりに遺骨を埋めるという供養の方法です。やはり何かしらそこに遺骨が埋まっているという事実と、手を合わせてもらう対象があるという点が人気の理由なのだと思います」(赤城氏)

 一方、自分が死んだら海洋散骨してほしいという人はアンケートを取ると1割ぐらいいるそうだ。ただし、実行できるケースはその内、1~2%ほど。この理由は代々墓があった場合、寺が反対するからだという。

「いざとなると、親戚のなかからも“お骨が全くなくなるのは寂しい”と反対の声が上がりがちです。三國連太郎さんが亡くなった時、海洋散骨を希望されていたのに、息子の佐藤浩市さん(63)はそうせずに墓石を建てたことはよく知られています。また折衷案として、半分撒いて半分手元に置くといったパターンもあります」(前同)

 海洋散骨では、船をチャーターしてパウダー状にした遺骨と花を海にまくというプランがベースで、価格は20~25万円ほど。自分たちの代わりに業者にまいてもらう“代行散骨”なら5万円ほどで済むそうだ。

“代行”のための遺骨はゆうパックで業者に送るだけ。なんとも事務的にも思えるが、赤城氏は、もはや“火葬場が預かって処分する”という流れが今後の主流になるのではないかと見る。

「お墓を買わない人が増えると寺は廃業に追い込まれ、身寄りのない人が入る永代供養墓もなくなります。身寄りがある人も、散骨を含め子どもたちへの手間をかけたくない。そうすると、遺体を焼いた後の遺骨の行き場がなくなります。

 もともと、関西では遺骨を一部だけ拾って残りは火葬場に置いてくるというスタイル、関東では基本的に全部の遺骨を骨壺に収めるのが主流でしたが、大手火葬場・東京博善が、2022年から遺骨の一部だけを遺族に渡し、残りは引き取って永代供養をするという“御遺骨部分引き取り供養”サービスを始めています。

 大手が始めたことで今後、関東でも広がる可能性は大きい。今後の価値観の変化によっては、一部といわず全部の遺骨を火葬場側で引き取るようになってもおかしくないと思います」(同)

 一年に一回、故人を偲ぶとともに、供養のあり方を考えさせられる時期だ。