■見逃し配信でも33万人以上の視聴者にPRできる

 プロダクトプレイスメントとは、番組やドラマ、アニメなどの中にスポンサー商品を登場させて紹介するプロモーションのやり方のこと。『晩酌の流儀』は、栗山演じる主人公が美味しそうに飲んでいるサントリーのビール『金麦』のコマーシャルとして機能している、ということだ。

《全部が美味しそう。さっきビール買っちゃった。グラスももちろん冷蔵庫で冷やしてる》
《晩酌の流儀見て久々に金麦買ったパッケージのデザイン良いよね》
《栗山千明さん主演の晩酌の流儀好きすぎて金麦買った》

 といった声がX(旧ツイッター)には多く寄せられている。見逃し配信・TVerのお気に入り登録者数は33.4万(8月16日18時現在)。地上波放送に加えて、単純計算で約33万人のTVer視聴者にも金麦をアプローチできているわけだから、広告効果は抜群と言えるだろう。

 なお、主人公が金麦でなく緑茶ハイを飲む回もあるが、そこではサントリーの焼酎ブランド『鏡月Green』が使われていて、やはりサントリーのPRにつながっている。

※画像は『晩酌の流儀3』の公式X『@tx_banshaku』より 

「プロダクトプレイスメントは昔から用いられていた手法ですね。商品を強調しすぎて露骨なCM感が出てしまったり、本筋の物語の妨げになってしまったりもするため賛否両論のはあります。当然、CMではないのに商品をPRするやり方に対する是非もあります。認められた一部の事業者しか放送ができない公共の電波で行なわれているわけですからね。

 とはいえ、『晩酌の流儀』は物語の世界観に違和感なくビールが溶け込んでいるので批判の声は少ない。スポンサーとしても局としても、大成功の作品と言えるでしょうね」(前出の民放キー局関係者)

 テレビ不況で視聴率は下がり、制作費が削減される中、プロダクトプレイスメントを採用するドラマは増えているという。

「ドラマの合間にスポンサーのCMが流れるのではなく、ドラマ自体が宣伝としても機能する。CMと違い早送りされるリスクはないし、TVerなど配信コンテンツでも確実に商品のシーンは流れるわけですからね。

『晩酌の流儀』が良い例ですが、リアルタイムの視聴率が低い深夜ドラマでも、面白くて影響力があってTVerなど配信が回るような作品だと、大きな広告出稿が期待できるわけです。企業にしてみても、効果がそれほどでもないCMに多額の予算を割くよりも、プロダクトプレイスメントを用いた方が効果的というケースもある。すでに、テレビ界では同手法に相当大きな金が動いています。

 そして現在、そのスマッシュヒット作が『晩酌の流儀』であると。ですので、業界から多くの熱い視線が送られているということですね」(前同)

“飯テロ”ドラマのパイオニアとして名を馳せた『孤独のグルメ』だが、松重の高齢化などを指摘する声もあり、今年の10月4日からは松重演じる主人公・五郎以外も食べるという特別編『それぞれの孤独のグルメ』が放送される。さらに1月の映画を一区切りに――栗山がビールを美味しそうにぐびぐび飲む『晩酌の流儀』が、さらに存在感を増していくのかも――。