■マッチングアプリが恋愛市場における格差を広げている

 恋愛至上主義的な意識が薄れ、“恋愛をしなくてもいい”という価値観も尊重されるようになった時代性が、若者の“恋愛離れ”の一因になっているわけだ。

 続いて前出の原田氏が指摘するのは、マッチングアプリの存在。先述の『僕と私と』の調査結果においても、“直近で付き合った恋人との出会いのきっかけ”について21.6%で1位となるなど、マッチングアプリを通しての出会いはすっかりメジャーとなっている。

「マッチングアプリでの出会いが主流になりながらも、交際経験ゼロの人は依然多い。なぜなら、マッチングアプリを使っても大半の普通の子たちは滅多にマッチングしないんですよ。

 どうしてもルックスのフィルターがかかって一部のイケメンに人気が集中してしまう。女の子は需要が高いので顔写真がなくてもまだマッチしますが、見た目に自信のない男の子はマッチしない。つまり、マッチングアプリは“恋愛離れ”を埋めるどころか、恋愛格差を広げている面が強いんです」(原田氏)

 給与に対する男女間の“ギャップ”も大きいという。

「ルックス以外の要素でアプリでマッチしやすいのは年収でしょうが、20代の男性の平均年収は350万円。それに対し、6割以上の未婚女性が男性に対して年収400万円以上を求め、なかでも最も多かった回答が500~600万円という調査結果もあって、大きくズレがある。昔のように年齢や勤続年数に合わせて給与が上がるというイメージもしづらい。結果、こちらも恋愛市場における格差が広がる要因に」(前同)

 こうした要因から、恋愛は“コスパが悪い”ものとして避けられるようになってきたようだ。

「恋愛は努力したところで必ずしも報われるというものでもないうえに、マッチングアプリの恋愛市場はシビアですから、“コスパが悪い”と言う子もいますね。

 さらに、スマホがあればいつでも友だちとつながれるので孤独感は薄いし、NetflixにしろTikTokにしろ時間潰しのツールもたくさんある。推し活に夢中になったっていい。とにかく恋愛以外で楽しめることが多いので、恋愛のプライオリティはどうしても下がるでしょう。むしろ恋愛に割く時間がないと言う子もいますよ」(同)

「恋リア」が視聴者から大人気なのは、現実世界での恋愛が困難になっているからかもしれない――。

原田曜平
慶應義塾大学商学部卒業後、広告業界で各種マーケティング業務を経験し、2022年4月より芝浦工業大学・教授に就任。専門は日本や世界の若者の消費・メディア行動研究及びマーケティング全般。 2013年「さとり世代」、2014年「マイルドヤンキー」、2021年「Z世代」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「伊達マスク」という言葉の生みの親でもあり、様々な流行語を作り出している。主な著書に「寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生(角川新書)」「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?(光文社新書)」など。