8月8日に宮崎県日向灘沖で発生した最大震度6弱の地震。これを受け、内閣府および気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。

「これはマグニチュード8以上を想定する‟南海トラフ地震”の発生確率が高まったという注意喚起で、 都府県707市町村に避難準備を呼びかける通知が出されました。NHKでは番組中に‟南海トラフ”という仰々しいL字テロップが流れ続け、市民の不安は膨らむ一方でした。あらためて地震大国の怖さを思い知った人も多かったはず」(全国紙社会部デスク)

 この‟特別呼びかけ”は 1週間限定のもので、15日に終了した。だが、地球物理学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏は、こう警鐘を鳴らす。

「これで一安心と思ったら大間違いです。今回の南海トラフ地震の危機が去ったわけではありません。また、それ以外にも、私の研究では首都直下型地震や富士山噴火がいつ起きてもおかしくない状況にあるんです。

 日本は常に危険と背中合わせという意識で臨むべきです。大事なのは、いつ巨大地震が発生しても対応できるよう、どこに避難するかを、あらかじめ決めておくこと。家族や職場の人たちと、ふだんからよく話し合っておくべきですね」

■水は「用意」よりも「節約」が大事

 災害が起きたときにパニックに陥らないよう、常に避難の想定をしておくことが必要とのことだが、そのときに、我々は何を用意すればいいのだろうか。

「よく言われるのは、水と食料はマストだということ。それに、安否確認や情報収集に欠かせないスマホの充電ができるモバイルバッテリーも大事ですね」(前出の全国紙社会部デスク)

 確かに、これらは大前提。特に水と食料は生きていくためには欠かせないものであるが、

「水は1人につき、最低でも1日に飲料用で2リットル、生活用に1リットルの計3リットルは必要といわれています。たとえば家族が4人いたら1日12リットルです。避難生活が何日続くか分からない中で、必要な分を避難所に持っていくなんて難しいですよね」

 こう話すのは、国際災害レスキューナースの辻直美氏。防災の専門家だ。

「大事なのは、どれだけ用意するかよりも‟いかに節約するか”。例えば、食器などの洗い物には拭き取りシート、洗髪にはドライシャンプーを使うなど、水の使用量を抑える心得が大切です」(辻氏=以下同)

東京水道局の調べによれば、1人が1日で使う水の量の平均は231リットル。これには風呂やトイレで使う水の量も含まれているのだが、それを差し引いても1日3リットルというのは至難の業だ。

「食料もバッテリーもそうです。要は長く持たせることが大事なんです。食べ物だったら飽きずに食べ続けられる工夫や、スマホだったら絶対に使わないときは電源を落とすなどの工夫が必要です」

 食料に関しての飽きない工夫とは?

「同じ保存食や非常食を何日も食べ続けたら、誰だって飽きます。ましてや、それが口に合わないものだったら最悪ですよね。だからこそ、自分がおいしいと感じるものを何種類か用意すべきだと思います」

■災害時に便利な3大「防災アプリ」

 また、スマホは災害時の安否確認や連絡手段だけでなく、避難生活での情報入手には欠かせないアイテム。

「災害用アプリは必須ですね。ズバリ一番のお薦めは『Yahoo!防災速報』。登録場所を現在地と国内3地点まで設定できるので、自宅、会社、子どもの学校など離れた場所の防災情報も入ってくるし、地震、台風、大雨、津波、火事について全部、プッシュ通知で教えてくれます。あとは、災害時に便利な機能が満載な『スマ保災害時ナビ』や、電波が通じなくてもカメラを起動してGPSで避難所に誘導してくれる『みたチョ』も良いです。通信環境の良い平常時にダウンロードしておくことをお勧めします」

 充電を長持ちさせるのは大事。そのため、モバイルバッテリーは欠かせないアイテムだろう。これらのアイテム、実は100円ショップ(以下、100均)でも、おおよそ手に入るという。

「どこの100均にもレトルト食品やシリアルなど保存の利く食材がバリエーション豊富にありますから、ふだんから試しに買って味比べをして、好きな物を数種類、避難用リュックに入れておくのがいいでしょう。モバイルバッテリーも、最近では500〜1000円の廉価商品が売ってます」

100均は保存食の宝庫。試し買いをしてお気に入りを見つけたら防災リュックへ! ※撮影/編集部
100均は保存食の宝庫。試し買いをしてお気に入りを見つけたら防災リュックへ! ※撮影/編集部

 それ以外にも、ほとんどの防災グッズが100均でそろえられると辻氏は言う。

「それらの中には防災リュ ックに入れるのではなく、ふだんから持ち歩いておくべき防災グッズもあります。そのため、軽くてコンパクトな持ち運びやすい物を用意することが大事です」