■常に携帯すべき防災“4種の神器”とは
水や食料、防災リュックなどは、公園などの広域避難場所から一時帰宅して体育館などの一時避難所に持っていく物。
それ以前に、いつ災害が起きてもいいように常時持ち歩くべき物もある。防災グッズをそろえる際は、そこを分けて考えるのがポイントだという。
その常時、持ち歩くべきグッズのことを、辻氏は「4種の神器」と呼ぶ。
「突然の災害に見舞われた際に便利な4点は、助けを呼ぶための防災笛、足元を照らしたりするための小型LEDライト、方角を知るためのコンパス、そして万能ナイフ(十徳ナイフ)です。災害時は、手で切れない物を切る機会が意外と多いので。これらも、すべて100均で入手可能です」
気をつけなくてはいけないのは、防災笛と間違えてホイッスルを買わないこと。警察、消防署、自衛隊が災害時に交通整理などで使用するホイッスルだと、鳴らしてもSOSと気づかれない可能性が高いのだという。
また、万能ナイフに関しては切れ味を重視するなら高価な物を勧めるが、刃の長さが6センチ超の物を持ち歩くと、銃刀法違反になるので注意したい。万能ナイフがなくても最低限、携帯用のハサミは用意したいところだ。
「これらを500ミリリットル程度のプラスチック製ウォーターボトルに入れて‟防災ボトル”として持ち歩くといいでしょう。つぶれにくいし雨にも濡れない。それにボトルは避難時に本来の用途であるコップにもなりますから。特に防災用品というわけでなく、どこの100均でも普通のプラ製品売り場にあります」
4種の神器以外にも、「なんといっても携帯トイレは絶対に必要。今は、どの100均でも普通に売られています。それと、防寒用に緊急用ブランケット。表と裏で防寒性が異なるものが使い勝手はいいです。保温用のアルミシートなどでも代用できます」
また、タオルも避難所などでは必要になるが、「水で膨らむタイプの圧縮タオルは持ち運ぶのに便利。とにかく、どんな物でも、携帯して邪魔にならない小さな物を選ぶべきです」
さっそく記者も100均に行き、これらの防災グッズをそろえてみたのだが、防災笛と万能ナイフ、ブランケットは入手できなかった。
ショップの店員に聞いてみたところ、巨大地震注意の通知以降、品薄で商品がなかなか入ってこない状態なのだという。
「皆さん、やっぱり準備していないから、何かあると慌てて買うんだと思うんですよね。ふだんから、ちょっと多めに物を買っておけば、そんな慌てなくてもすむと思いますよ。防災リュックの中はドラえもんの四次元ポケット。自分のお気に入りグッズを、いっぱい詰めるイメージでいいんです」
例えば、好きな食べ物は防災リュックに取っておいて、食べたくなったら食べて、また補充する。そうすれば、消費期限切れも防ぐことができて、一石二鳥というものだ。
「“災害は怖いけど、防災はオモロい”。それくらいの気持ちで集めると、いいと思いますよ」
防災対策は構えずに日頃から楽しむ。その余裕があれば、災害時もパニックにならずにすみそうだ。
島村 英紀(しまむら・ひでき)
地震学者(地球物理学者、地球科学者)、日本文藝家協会会員、評論家、エッセイスト。武蔵野学院大学特任教授。
辻 直美(つじ・なおみ)
国際災害レスキューナース。一般社団法人育母塾代表理事。吹田市民病院、聖路加国際病院で勤務後、英語やフランス語をマスターして国際災害レスキューナースとして活躍。国境なき医師団や国際緊急援助隊医療チームにも所属。東日本大震災や西日本豪雨などでの救助も行う。