令和ではあり得ないトンデモ文化が当たり前だった昭和時代。その代表ともいえるのが、同じ劇場で2本の映画を連続して上映する“2本立て映画”だ。
「シネコン世代にはイメージしづらいですが、昭和から平成初期にかけて、日本の映画館では2本立て形式が当たり前でした。
同系統の映画のみならず、喜劇と悲劇、子供向け作品と大人の恋愛ものなど、トンチンカンな組み合わせの2本立ても多々ありましたね」(映画誌ライター)
その中でも、今ではとても考えられない“トンデモ2本立て映画”を5つ紹介しよう。
■1.『となりのトトロ』×『火垂るの墓』
感情が追いつかない――とジブリファンの間でしばしば話題になるのが、1988年4月に2本連続で上映された『となりのトトロ』(監督:宮崎駿)と『火垂るの墓』(監督:高畑勲)だ。
「終始、明るいトーンのファンタジー『となりのトトロ』に対して、戦争の悲惨さをリアルに重苦しく描いた『火垂るの墓』。スタジオジブリの“名と暗”ともいえる対照的な2作品です」(前同)
当時ほとんどの映画館は、いつでも自由に入場でき、好きな席に座ることができた。
「『となりのトトロ』、『火垂るの墓』の順で観た人は、どんよりとした気持ちで席を立ったといいます」(同)
■2.『怪獣大戦争』×『エレキの若大将』
1965年末、東宝は同社の二大看板にタッグを組ませた。
ゴジラシリーズの第6作となる『怪獣大戦争』(監督:本多猪四郎)と、加山雄三主演の人気シリーズ第6弾『エレキの若大将』(監督:岩内克己)である。
お正月映画らしい豪華なラインナップだが、ゴジラファンと加山雄三ファンが重複しているとは思えないが……。
「ゴジラを目当てに映画館に行ったちびっ子が、そのまま『エレキの若大将』も見て、当時は“不良”とされていたエレキギターに憧れるきっかけになったとか。後に訪れるロックブームは、この2本立てのおかげだったのかも」(前出の映画誌ライター)
■3.『地球防衛軍』×『サザエさんの青春』
1957年末、東宝は『地球防衛軍』(監督:本多猪四郎)という特撮映画を公開した。これは、高度な科学技術を持つ異星人ミステリアンと人類の戦いを描くSF大作だ。
そして、同時上映は『サザエさんの青春』(監督:青柳信雄)だった。
「当時の人気歌手・江利チエミが主演した実写版『サザエさん』の第3弾。描かれるのは、人類の存亡とはまったく無関係の日常が舞台のドタバタ劇です。このミスマッチが昭和らしいですね」(前出の映画誌ライター)
■4.『ノストラダムスの大予言』×『ルパン三世 念力珍作戦』
映画会社が勝負をかけた大作映画であっても2本立てがフツーだった。
1974年8月公開の『ノストラダムスの大予言』(監督:舛田利雄)は、人類の滅亡をテーマにした壮大なパニック映画だが、その併映にはお気楽な作品が用意された。
タイトルは人気漫画の実写版『ルパン三世 念力珍作戦』(監督:坪島孝)。
「ルパン三世役は、当時27歳の目黒祐樹。当時の実写版ルパンは、原作やアニメのスタイリッシュな雰囲気は薄く、コメディ色の強い内容でした」(前出の映画誌ライター)