世界平和を目的にしたスポーツの祭典であるオリンピック。先にパリ大会が終わったばかりの五輪は、1896年にギリシャの首都・アテネの地で開かれた第1回大会から開催されており、そして、その長い五輪の歴史の中でも屈指の人気を誇るのはマラソンである。日本でのマラソン人気も根強く、近年は皇居のお堀周りを走る皇居ラン人気などの影響からか、都内では市街を颯爽と走るランナーの姿も目立つ。

 一方、温暖化で猛暑が続く影響から夏場のマラソンには大きな危険が潜む。弊サイトは、1992年バルセロナ五輪で銀メダル、96年アトランタ五輪で銅メダルを獲得した有森裕子さんに話を聞いた。有森さんは、パリ五輪の陸上女子やり投げの表彰式にプレゼンターとして登場。金メダルを獲得した北口榛花選手と両手で固い握手を交わしていた。

「五輪と世界陸上の影響でマラソンは夏の競技というイメージがあるかもしれません。しかし、それ以外の大会や選考会はすべて秋と冬に行なわれています。日本の夏は猛暑日が続き、昼間に屋外で運動するには危険な暑さです。競技者でもない限り無理に夏場に走る必要はないのです」(有森さん)

   五輪メダリストで世界のトップランナーとして活躍した有森さんも、夏場の練習は、日差しがカンカン照りとなる日中は避けて行なっていたそうだ。

「練習時間はチームの監督が決めるものでもあるのですが、夏場の日中は避けていましたね。午前中は5時から8時の間。午後は陽が落ちてくる夕方の5時くらいから始めていました」(前同)

 また、夏場に屋外で運動する際は時間帯だけではなく、環境面にも気を配った方が良いと有森さんは指摘する。

「アスファルトの上でなく、土の上を走ったり、日陰や緑の近くを走るだけで体感温度はグッと下がります。また、氷水をガブガブ飲むのはランニング中には避けた方が良いでしょう。内臓に負担がかかって余計疲れやすくなってしまいます。競技中に選手が飲んでいるのも基本的には常温の水です」(同)

 現役時代に室内で過ごす際は夏場でもクーラーのスイッチは切り、季節の天気と大幅に異なる環境へは身を置かない様にしていたという有森さん。過酷なレースを乗り切るため、新陳代謝を高める手段として、苦肉の策だったそうだ。こういった過酷なトレーニングを乗り越えたトップアスリートでも、完走が困難なのが夏場のマラソン大会だ。