■密子の復讐が盛り上がらないわけ

 まず、密子と九条家との戦いという、本筋の展開の遅さが原因だろう。ここにきて、密子の姉の死の真相を暴くという、大きなカギとなるエピソードが出てきたが、すでに遅すぎる。もっと早い段階で、姉の存在をはっきり出していれば、視聴者の興味を引くことができたはずだ。

 また、敵となる大企業・九条開発の描き方にも問題がありそうだ。どんな業務をしていて、どんな悪いことをやっているのか描写が少なく、敵としての存在感が薄いのだ。九条家で家族会議ばかりしている姿は、単に同族経営にしがみついている集団にしか見えず、悪さが伝わってこない。これでは密子の復讐劇も盛り上がらない。

 さらに、夏の長男・智(清水尋也/25)と遥人(上杉)を絡めた、匂わせのキュン要素がちょこちょこ入るので、サスペンス部分が薄くなっている。おまけに、遥人に思いを寄せる秘書・千秋を演じる、桜井日奈子(27)のコミカルな演技も、シリアスな展開に水を差してしまっている。

 そんな演出や演技のため、全体的にゆるさが目立ち、ダークヒロインを描いているのに、ドキドキする緊張感が足りないのだ。本来、謎が謎を呼ぶサスペンス系ドラマは配信サービスで強いが、そこで惨敗しているのは、明らかに考察が好きな視聴者を引き寄せられていないからだろう。

 とはいえ、物語は後半戦に入ったばかり。次回は、亡き姉・鞠子(泉)のノートパソコンから、九条開発の不正な金の出入りを示すようなメモが発見され、密子が贈賄疑惑を暴こうとするようだ。夏(松雪)の社長選も迫り、密子のさらなる巻き返しがあるか? 視聴者をドキドキさせる展開に期待したい。(ドラマライター/ヤマカワ)