■「ワニが死んだのか? の真相も明かされていきます」

――編集者と話すうちに、決意されたんですね。

 当時から「ネズミのその後を描くとしたら、こんなふうに形にしたいな」という構想は自分の中にあったので、編集者の方々の意見も取り入れつつ、すんなりと描き始めることができました。

――新連載で、きくちさんが伝えたいと思っていることを教えてください。

 100日後を迎えたあの日から月日が経った新たな100日間の世界を描いています。「終わらせるべきことを終わらせて前に進もう」というメッセージを込めた作品です。ネズミとワニとその仲間たちの生き方を見てくださるとうれしいです。

 前回のワニのマンガでネズミが経験したのは「終わらないと思っていたけど、急にどんなことにも終わりが来る」ということでした。今回は「終わり」に対する意識が変わり、ワニの“衝撃の一日”、事故の一件を機に、それぞれのキャラクターたちがどう生きていくのか、見守ってほしいです。ワニが死んだのか? の真相も明かされていきます。

――筆はスイスイと進んだんでしょうか。

 いえ、全然スイスイじゃないです(笑)。僕はマンガを描くときに自分の意志を入れたくなくて、「こういう流れにしたい」と思う一方で、当のキャラクターの立場や心情では、そういう流れになるようなセリフを言うのは不自然だったりする。

 だからそのつど細かく「この子はここで、どう行動するんだろう」と立ち止まって描いていたので、思うようにいきませんでした。

 理想はあるんですけど、キャラクターそれぞれの個性もあるので、なかなか僕の思い通りにはならないんです。

――今回、ネズミくんは100日後にどうなるんですか? タイトルは「死ぬ」に×が入っていますが、どのような意味があるのでしょうか……。

「タイトル」に込めた想いは、読者の方に生死について考えるきっかけにしていただけたら、という著者としての想いが込められています。

 読者の方々も、日々の日常をさまざまな経験をして……つらくても生きていると思います。ネズミも、親友のワニとの経験を経て、つらくても生きています。

 そんなふうに同じ目線で今を生きている者同士として、「ネズミはどうなっていくんだろう?」「ネズミはどう生きていくんだろう?」というところを読んでいただき、「自分らしく生きること」、近くにいる相手を知っているようで知らない時代に「寄り添うことの大切さ」を感じとっていただけたらと思います。

――連載が始まりましたが、現時点も毎日描いているのでしょうか?

 はい、今もセリフの直しや構図を変えたり、一日一日、試行錯誤しながら描いてます。

 作品は、前作に登場したセンパイやモグラも登場し、恋愛、友情、仕事ーーなど、ネズミやワニを中心とした当たり前の日常が描かれて行く予定です。

――1話目投稿後、フォロワーの方からはどんな反応がありましたか。

 反応がまったくない、という可能性もあると思っていましたが(笑)、「続編を開始してくれて、ありがとうございます」「今後がとても楽しみです」との声も多数いただき、本当に嬉しい限りです。

 Xにてはじめしゃちょーさんからは「ネズミ…泣」。同じくXにて、上田慎一郎監督からも《きくちさんから電話あって『ワニの続編始めます!』と聞いた時はびっくりした!どんな物語が始まるのかは敢えて聞きませんでした。いち読者として楽しみます!!》と温かいメッセージをいただきました。

 描きたいものを納得して描いていくことが大事だと思うので、反応は大変にありがたく感謝しつつ、「自分らしく生きること」、近くにいる相手を知っているようで知らない時代に「寄り添うことの大切さ」を読者に伝えていけたらなと思っています。

※   ※

 8月21日からきくちさんのXで連載が始まり、早くも話題を呼んでいる漫画『100日後に死ぬ×ネズミ』。『100日後に死ぬワニ』から月日が経った世界で描かれる物語とは――日々の更新を楽しみに待つ人もすでに多くいるようだ。

きくちゆうきさん  撮影/冨田望

プロフィール
■きくちゆうき■イラストレーター/漫画家
2015年より「どうぶつーズの漫画」(幻冬舎plus)、16年より「SUPERどうぶつーズ」(LEED Cafe)の連載を開始。2020年に自身のTwitter上で4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」を連載。#Twitterトレンド大賞2020でTwitterトレンド大賞にて最多リツイート賞&最多いいねのW受賞。同作品の書籍版は35万部を突破。その他「何かを掴んでないとどこかに飛んで行っちゃうアザラシ」など、オリジナリティ溢れるキャラクター作品を展開中。