■高校野球に木製バットを導入の韓国球界は長距離砲が絶滅

 強打が売りの強豪校が敗退する一方、「守備を中心とした細かな野球を行なうチームは勝ち上がっている印象」、と前出のお股ニキさんは話す。

「島根代表で公立高校の大社高校はエースの馬庭優太投手を中心にベスト8まで勝ち上がりました。かつては圧倒的な力の差があった強豪私立校と公立校ですが、低反発バットの導入によりロースコアのゲームが展開されることでジャイアントキリングの可能性は高まっている印象を受けました」(お股ニキさん)

 低反発バットの導入により、波乱含みの大会模様必須となりそうな今後の甲子園。客席が大盛り上がりとなりそうな反面、選手の育成に低反発バットが与える影響は無視できないとお股ニキさんは指摘する。

「従来であれば外野の頭を超えた打球が超えない。ピッチャーもストライクゾーンにさえ投げれば、痛打を浴びることは少ない。この環境に慣れてしまうと必然的に打者はホームラン狙いではなくシェアなバッティングを心掛けるようになり、打球の打ち出し角度も自然と下がります。

 ピッチャーも打球が飛ばずバッターが大振りをしないとなれば、ストレートで押すような支配的な投球よりもゾーン内で打たせてアウトをとるようになる。低反発バットの導入で選手のスケールが小さくなる可能性は否定できません」(前同)

 現にお隣の国・韓国では、2005年から高校野球にも木製バットを導入。その結果、ボールが飛ばなくなり、ソフトバンクで活躍したイ・デホ選手(42)や巨人などに在籍したイ・スンヨプ選手(48)の様な長距離砲は韓国球界から姿を消しているそうだ。

「日本の高校野球でも選手のスカウティング方法が変わるのでは。バントや走塁技術に秀でたスモールベースボール向きの選手が好まれる可能性はありますね」(同)

 熱中症対策の一環として7回制の導入も検討されている高校野球。バットの変更は今後、どの様な変容を甲子園にもたらすのか。

お股ニキ
野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、フォロワー3.5万人を超える人気アカウントに。ダルビッシュ有投手を筆頭に約40名ものプロ野球選手が加入するオンラインサロンを運営し、アドバイスを送る。
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