■小学校で“夏のラジオ体操”が縮小される「音以外の理由」
出席すればスタンプがもらえる“出席カード”はかんぽ生命が作成、地域の郵便局を通じて全国の小学校に配布しており、今も800万枚以上印刷している。文部科学省の「令和5年度学校基本調査」によると全国の小学生の数は約605万人だから、小学生の全数をラクラク超える枚数だ。
「今年は約850万枚作成しています。配布先は全国の小学校や地域のラジオ体操会、企業などで、使い方はそれぞれにお任せしています」(前出のラジオ体操推進担当課長・井花さん)
小学生の夏休み、ラジオ体操をする期間が個人の体験によってまちまちだったり、出席率に応じて“ご褒美”がもらえたりもらえなかったりするのは、運用が配布先に任されているためだ。そんな小学校で、近年夏休みのラジオ体操を廃止・縮小する動きもある。“ラジオ体操の音”についての苦情が寄せられることも一因だが、背景には複数の要因が絡む。
「小学校の学習指導要領が98年に改訂された時に、それまであった“体操”という表現が“体つくり運動”に変わりました。またその後、ダンスが必修化されるなど、体育領域の指導内容が変わるとともに、“体操や準備運動といえばラジオ体操”というイメージも少しずつ変わってきたのかなと思います。さらに生活の多様化もあり、地域の子ども会の活動が昔ほど活発ではなくなっているという事情もありそうです」(前同)
現に2004年度(平成16年度)には全国の小学校で76.4%の実施率だったラジオ体操だが、20年度(令和2年度)にはその数字は、63.2%にまで激減している。徐々にその姿を街中から消しているラジオ体操だが、コロナ禍をきっかけにその良さを見直す動きも出ているそうだ。
「かんぽ生命でラジオ体操第1の楽曲の著作権を所有しているのですが、コロナ禍は屋内で体を動かしたり、YouTubeやSNSで運動する様子を公開したりしたいといった需要があり、楽曲の使用申請が急増しました」(同)
日本人なら誰もが知っているからこそ、工場などの現場ではラジオ体操を日課にするところも多い。また高齢者でも音楽が鳴れば体が自然に動くためラジオ体操の意義は大きい。井花さんは、「今後は子どもたちと高齢者に加えて、そのあいだの層にも、インターネットを活用してさまざまな形でラジオ体操の良さを発信していきたい」と意気込んでいる。