夏休みといえば、子どもの頃、朝6時半から始まるラジオ体操に参加した思い出がある大人は多いだろう。

 昨今は“音がうるさい”として自治体や学校での開催を縮小する向きもあるが、NHKの番組自体は365日放送され続けている。とりわけ夏は“夏期巡回ラジオ体操・みんなの体操会”として全国各地からラジオで生放送するほか、年に1回行なう『1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭』はラジオに加えてテレビでも生放送。今年の夏期巡回のスタートは7月20日に東京都江東区の木場公園で、約2000名が参加する賑わいを見せた。

 そもそも、ラジオ体操はなぜこんなに国民的になったのか。また、今後はどうなっていくのか――ラジオ体操の意義と実態を探るべく、かんぽ生命保険ラジオ体操推進担当課長の井花さんに話を聞いた。

 ラジオ体操の歴史は古い。さかのぼること1928年(昭和3年)、かんぽ生命保険の前身・逓信省簡易保険局(ていしんしょうかんいほけんきょく)が、国民の健康保持推進のためとして「国民保健体操」として制定し、ラジオ放送が始まった。

「もともとは1925年(大正14年)、アメリカのメトロポリタン生命保険会社でラジオ放送による健康体操が行なわれていて、それを参考に取り入れたとされています。当時(30年頃)は男女ともに平均寿命が45歳ぐらいという時代。肺結核などの疫病で亡くなる方も多く、健康を支援する施策として始まりました」(井花さん)

 全身運動であるラジオ体操は子どもたちの運動としても良いと注目され、文部省(現文部科学省)の後押しもあるなかで、簡易保険局がポスターやレコードなどを学校や会社などに配布するなどして普及活動に努めた。子どもたちの夏休み行事となったのは、とある警察官のアイデアが発端だったという。

「30年(昭和5年)に東京・神田万世橋署の巡査が、夏休みに子どもたちが楽しく、かつ心身を引き締めて過ごす方法がないかと考えた結果、“ラジオ体操の会(子どもの早起き大会)”を始めたとされています。“出席カード”が始まったのは戦後の52年頃からとされています」(前同)