■『エスターバニー』を背景に推しのトレカを撮影、“推し活との共存”という個性
『ホテルニューオータニ』といえば、劇場版もヒットを記録した人気テレビアニメ『文豪ストレイドッグス』や、誰もが知るゆるキャラ『くまモン』とのコラボも行なってきた。しかし今回の『エスターバニー』とのコラボは、ファンには満足度が高そうではあるものの、メイン支持層のZ世代女子には1泊3万9000円と少々高額すぎる印象もある。なぜ同ホテルは『エスターバニー』と手を組んだのか。
弊サイトは、若者研究の第一人者で、マーケティングアナリストとしても活躍する芝浦工業大学デザイン工学部教授の原田曜平氏に取材。すると、『エスターバニー』のユニークな立ち位置が浮かび上がってきた。
「まず、『おぱんちゅうさぎ』なんかはキャラがかなり立っていますが、それと比べて『エスターバニー』はキャラ感が強くなく、可愛い系のファッションにも綺麗系のファッションにもマッチしやすい。そのため、他の“推し”やオタクグッズなどと一緒にアクセサリー感覚で身に着けやすいようです。実際、『エスターバニー』のトレカ(トレーディングカード)ケースに推しを入れたりするそう。『エスターバニー』の広告を背景に、推しアイドルのトレカを写真に撮ってSNSにアップする人もいます」(原田氏)
アイドルの推し活やオタ活と共存する存在に『エスターバニー』はなっているそうだ。そして今回のホテルニューオータニのコラボルームもここがミソとなっているという。
「近年の推し活の動向として、ホテルでファン同士が集まり、推しについて語ったり推しの誕生会を祝ったりする、 “ホカンス”推し活が流行しています。『エスターバニー』のコラボルームは、内装が凝っていてかわいいため、“映える”空間で推し活ができる。ホカンス推し活のためならちょっと頑張ってお金を出す人も多いですから、そういう需要を狙っているのでしょう」(前同)
キャラクターそのものが人気なだけでなく、推し活を映えさせるファッション性も兼ね備える。『エスターバニー』の大型コラボが続くのは必然と言えるのかもしれない。
太田まき子
新潟県出身。大学卒業後、広告会社及びマーケティング会社にて女性向け商材のプロモーション、ファッションカルチャーイベントの企画運営、エンタメ系の広報PRなどを担当。現在はフリーランスのPRとして、トレンドのマーケティングやリサーチを行う。
原田曜平
慶應義塾大学商学部卒業後、広告業界で各種マーケティング業務を経験し、2022年4月より芝浦工業大学・教授に就任。専門は日本や世界の若者の消費・メディア行動研究及びマーケティング全般。 2013年「さとり世代」、2014年「マイルドヤンキー」、2021年「Z世代」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「伊達マスク」という言葉の生みの親でもあり、様々な流行語を作り出している。主な著書に「寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生(角川新書)」「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?(光文社新書)」など。