ひと昔前の夏といえばミンミンと騒がしかったセミの鳴き声を、今年は聞かない気がする……。

 どうやらわずか数十年の間に、虫たちの環境に変化が訪れているようなのだ。

 約30年にわたり、生物の生態系を調査し、採集してきた『株式会社野生態系Holmes』(大阪府)代表の西村真樹氏がこう語る。

「セミ全体が減ったという実感はありませんが、各地域に生息するセミの種類が変化したのではないでしょうか」

 それを裏付けるかのように、千葉県船橋市や石川県金沢市などの自治体が行なう「セミの抜け殻調査」では、アブラゼミの数が減少する一方、クマゼミの数が増えているという報告がなされている。

 生態系に変化があったのはセミだけではない。農業に悪影響を与えるような事象も見られるようになってきたのだ。

脱皮したばかりのセミ ※撮影/編集部
脱皮したばかりのセミ ※撮影/編集部

「農林水産省の発表によると、近年は病害虫の発生時期の早期化、発生量の増加、発生地域の拡大が見られています。中でも今年は、カメムシが大量に発生しており、梨などの果樹に深刻な被害をもたらしています。ピンチを迎えた農家の方は、頭を抱えています」(全国紙科学部記者)

 8月22日、過去10年間で最多の36都府県から病害虫発生予察警報・注意報が出されている。農家のほか、各家庭でも洗濯物に付着し、独特な臭いが移る被害が続出し問題になっているのだ。

 実際に被害の多い愛知県の職員で、同県の『農業総合試験場 環境基盤研究部 病害虫防除室』所属でカメムシ対策に当たっている菅原氏に話を聞いた。

「カメムシは1年で1世代のサイクルの生物なんですが、8月ぐらいを境に世代が交代します。多い年と少ない年がありますが、今年は多くなるというのは事前に予想はしておりました。

 地形の関係で山に近い農園に被害が多い傾向があるのと、台風が通り過ぎた後にカメムシが増える傾向があります」