■保有資産から見るステータスは

 なお、クレヨンしんちゃんの連載が開始された1990年代と現在では、平均年収にも違いがあるという。

「1997年の467万円をピークに、日本人の平均年収は現代まで右肩下がり。2024年は458万円で、ひろしの推定年収600万円は、令和、平成に置き換えても、どちらも高収入なんです」

 また、野原家の“保有資産”も、令和の時代ではなかなか達成するのが難しい内容だ。

 安月給でも買える売れ残りの埼玉県春日部市にある物件を購入した、というストーリーだが、昨今の首都圏の土地代高騰は春日部市も、例外ではない。

「1990年代の春日部なら、3000万円以下で買えたでしょうが、今は3500〜4000万円ほど。ひろしの年収からは妥当な価格ですが、当時はバブル景気で、都内とそれ以外の県の土地代に大きな格差があったようです。ひろしも、涙を飲んでの春日部だったのでしょう」

 また、作中では、みさえの壊滅的な運転技術で車が大破するたびに車を買い替えたり、火事で自宅が焼け落ちたこともある。そのシーンからも、経済状況の余裕ぶりが窺えるという。

「3台目の車には、ステーションワゴンを新車で購入。これは200〜250万円ほどの価格です。また、火事で建て直しになった家も保険で全額保証となったとのことで、支払っている保険料も安くはないでしょうし、作中で言われているような安月給の家計では難しいですね」

 ちなみに野原家は、2004年に同市の市制施行50周年を記念して「春日部市双葉町904」の住所で、特別住民登録されている。

 さらに今年は、アニメが開始された1992年から数えて、32年。現実世界であれば、ひろしは晴れてローンを完済したことになる。

「今後は、子供の中学受験や塾代で頭を抱えるかもしれませんが、頑張ってほしいですね」

 今や老若男女が愛する理想の父親像とも言われる野原ひろし。性格はもちろんだが、そのステータスも超人級だった。

高山一惠
(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)など、著書累計160万部超。