■フリーアナウンサーがSNS炎上を起こしやすいワケ

 敏腕アナウンサーたちが番組で披露する人気芸人顔負けの対応力。しかし、多くのアナウンサーは番組内で自分の意見を述べたことなどない。そこに落とし穴があると前出の鎮目氏は話す。

「膳場さんはNHK出身でアナウンサーとして原稿を読み上げる能力はものすごく高いです。しかし、今、彼女が『サンデーモーニング』内で務めるのは俳優としてキャリアを積み重ね、司会業に転身した関口宏さん(81)のポジション。用意された原稿を読むというよりも意見を述べることが求められる仕事です。求められるアドリブ力が違います。膳場さんが番組に関わり始めたのは今年の4月から。まだ、番組環境に慣れておらず、一瞬の失言につながったのだと思います」(鎮目氏)

 一方、SNS利用で炎上を招きやすいのは局アナよりもフリーアナウンサーの方だという。

「テレビ局の社員である局アナは、SNSの運用は番組宣伝だけを目的とするなどの規制が局内にあります。しかし、フリーアナウンサーの場合は、ファンを獲得する必要がありますし、目立たないと業界内での立ち位置がなくなるとの焦りからか、投稿も過激になりがちなのです」(前同)

 現にX上で炎上した川口の投稿にも大きな問題点があったと、鎮目氏は指摘する。

「投稿では“夏場の男性の匂いが苦手すぎる”と書いています。“夏場の体臭が苦手です”など、男女が特定されない様な投稿であれば炎上することはなかったのではないでしょうか。それを“男性の匂いが”とわざわざ断定する様な書き方をしたものだから、炎上したということだと思います」(同)

 背景にあるのはアナウンサーのタレント化だという。

「かつては、しゃべりのプロとして職人肌の人間が多かったアナウンサー業界ですが、時代と共に変化。原稿を読む能力が高い人というよりも“面白いことをしゃべる人”や“キャラが立った人”を好まれるようになりました」(同)

 しかし、キャラばかりが先行すると、先にXでやす子(25)への暴言を書き活動休止を発表した、フワちゃん(年齢非公表)の様に舌禍騒動を招きかねない。そのため、鎮目氏はこう話す。

「自分が思ったことをしゃべって、笑いを取るのがアナウンサーの仕事のようになってきていますが、本来は完璧に原稿を読み上げるのがアナウンサー業です。自分の意見を話そうとプレッシャーを感じすぎないで欲しいですね」(同)

 羨望の眼差しを向けられて来た花形職種も、時代の変化にあわせて様々な能力を身につけないといけないようだ。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)