■上下水道が整備され、住環境が整い咬傷事故が減少

 大幅に減少した島内のハブによる被害者たち。上下水道が整備され、住環境が整ったこともハブによる咬傷事故を減少させる原因になったという。奄美市・自然環境保全課の担当者が話す。

「ボットン便所が一般的だった頃には、用を足している最中にアソコをガブリなんて事故もあったそうです。他にも家に空いている穴からハブが室内へと侵入し、睡眠中の家主が襲われたという事故もあったと聞きます。水洗トイレが整備され、住宅環境も整った今ではさすがに起きていませんが……」

 21年にはユネスコ世界自然遺産にも登録された奄美大島。インバウンド観光客の増加も受け、島内ではトンネル整備が進められ、ドクターヘリも導入され始めた。

「交通状況が改善されたことで、咬傷事故に遭遇した患者さんを病院へ搬送する時間は大幅に短縮されました。ですので近年、咬傷事故による死亡者は出ていません」(前出の奄美市・名瀬保健所の担当者)

 それでは、ハブによる咬傷事故は現在どの様なタイミングで起きているのだろうか。

「さとうきび畑での作業中に草むらにいたハブを踏んづけたら噛まれたというケースが最も多いです。長靴を履いていたりすれば避けられる事故でもあるんですが」(前同)

 23年度に島内で捕獲されたハブの数は10199匹。これらのハブは専門業者が捕獲作業を行なっているのではなく、島民が捕まえてくるそうだ。

「道端で見つけたハブを島民の方がハブトリ棒と呼ばれるおもちゃのマジックハンドに似た道具で捕まえて、専用の捕獲箱に入れ保健所や役場に持ってきます。それを1匹3000円で買い取る。買い取ったハブは、ハブ酒業者や革製品業者などへと売られていきます」(同)

 かつてはお祭りなどの行事の際、格闘させられることもあったハブとマングース。奄美大島では、人間の手によって両者の戦いに終止符が打たれた。