■“メジャー”じゃないのを逆手にとったPayPay不倫

 LINEやインスタグラムなどといったSNSが広まった今、通常なら、交際相手とのメインのやり取りがPayPayというケースは考えにくい。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、「それを逆手にとったのが、“PayPay不倫”」だと指摘する。前述のルカさんの元カレもPayPayチャットを使い浮気をしようとしていたわけだが、同機能を利用した不倫も行なわれてきているという。

「単純に、PayPayでチャットができるということがあまり知られていないというのが大きいとことですよね。そしてPayPayといえば、決済に使うものというイメージが強い。パートナーの不倫を疑ってスマホをチェックするとしても、メイン機能が別にあるものはそこでのチャット履歴をいちいち確認しないものです。自分の知らないアプリを触るのは怖い、という心理もあると思います。PayPayチャットの盲点というわけです」(井上氏)

 しかもPayPayチャットでは、自分や相手の表示名を自由に変えられるため、不倫相手を“偽名”登録することも可能だ。LINEと同様の機能だが、やはりPayPayチャットがメジャーじゃないからこそ、不倫関係において都合の良さが潜むという。

「やろうと思えば不倫し放題でしょう。もしやり取りがバレたとしても、頻繁に使うLINEとは異なり、“乗っ取られているのに気づかなかった”、“知らない人”といった知らぬ存ぜぬの言い訳ができてしまうでしょう」(前同)

“裏ツール”として活用されるPayPayチャット。井上氏は、口座と紐づいているがゆえのリスクも指摘する。

「一気通貫でお金を払えてしまうわけですよ。たとえば昨年12月、交際していた女性にPayPayで数円を送りつけ、その返金を求めるメッセージを何度も送っていた男性がストーカー規制法違反で福岡県警に逮捕されました。女性側もPayPayでそんなことをされるとは思っていなかったでしょう。男側はお金を送っているんだから返還義務があるという理屈のようで、“構ってほしかった”と供述していましたが。

 これは特殊例だとしても、PayPayにチャージさえすれば、いつでも送金できるということ。不倫相手にも、口座に履歴を残さずお金のやり取りができてしまいますよね。ただならぬ関係であればあるほど、“便利”なシステムになってしまっている。今後、悪用した犯罪が発生するリスクは十二分に考えられると思います」(同)

 今年8月には登録ユーザーが6500万人を突破したPayPay。もはや日本人の2人に1人が利用している立派な社会インフラだが、よからぬ使用法が散見されつつあるチャット機能にも大きな注目が集まる――。

井上トシユキ
同志社大学卒業後、会社員を経て1989年より取材執筆活動を開始。IT、ネットから時事問題まで各種メディアへの出演、寄稿および論評多数。企業および学術トップへのインタビュー、書評も多く手がける。