所狭しと棚に積み重ねられるのは、ハングル文字が書かれた商品パッケージ。スパイスの香りが充満していたであろう埼玉県内にある商社のオフィスを、山口県警の捜査官が訪れたのは2022年12月のことである。

「山口県警は都内の商社や茨城県、山口県、福岡県の水産会社など数十か所をこの時に家宅捜索。北朝鮮産のシジミを韓国経由でロシア産と偽って、下関港へ輸入したとして県警は9月5日に外為法違反容疑で商社の代表ら3人と法人を書類送検する方針を固めました」(全国紙社会部記者)

 核や弾道ミサイルの開発を続ける北朝鮮に対し、日本政府は09年から輸出入を全面禁止する独自制裁を続けている。

「県警は国内のネットワークを通じて、北朝鮮に資金が流れた疑いがあると見ています。過去にも北朝鮮産の水産物の産地を偽り、業者が国内へと輸入したケースは事件化しています。

 韓国銀行の推計によれば、北朝鮮の23年の実質国内総生産は、中国との貿易がコロナ規制緩和で増加したことなどにより前年比3.1%増えたとされている。国内景気は好調な北朝鮮ですが、外貨獲得の手段として海産物の国外輸出は欠かせないということなのでしょう」(前同)

 禁輸されているはずの北朝鮮産の海産物は、日本国内へどのように持ち込まれているのか。弊サイトは情報番組『ひるおび!』(TBS系)などでも朝鮮半島問題の解説する、『コリアレポート』編集長の辺真一氏に話を聞いた。

「第1の問題は、仲介している国にあると思います。日本へ輸入される北朝鮮産の水産物は、中国やロシアなどを介して入ってきます。産地偽装は経由地である第3国で行なわれるわけですよ。第3国のブローカーは、北朝鮮産の海産物を安く買い叩き、日本へ高く売る。北朝鮮は国連安保理の制裁対象国とは言え、近隣国と貿易関係を持ち事実上、制裁逃れの状況にある。この状況を利用してブローカーは産地偽装をするというわけです」(辺氏)