■北朝鮮産シジミのカギを握るのは第3国の仲介業者
ロシア産と偽られた北朝鮮産のシジミを輸入した日本の商社は、シジミの産地偽装を知らなかった可能性もあるというわけだ。
「北朝鮮産の海産物が日本へ持ち込まれないようにするには、第3国にある仲介業者の現地での扱いが重要になります。今回のケースであればシジミは1度、韓国を経由し下関港へと持ち込まれている。
韓国も日本と同じく、北朝鮮に独自制裁を課しており統計上は北朝鮮との貿易は現在ゼロの状況です。日本へのシジミの輸出を仲介した韓国の会社が現地でどのように扱われるのか……当局の捜査を受け仲介業者の経営者が拘束されでもしないことには、今後も北朝鮮産の海産物が日本国内へと韓国から輸出され続けるかもしれません」(前出の辺氏)
海産物の輸出などで獲得した外貨を、北朝鮮の上層部はどのように利用するつもりなのだろうか。
「核ミサイルから住民の衣食住に関わる民生分野まで、その使い先は様々でしょう。北朝鮮は現在、ウクライナ戦争特需。ロシアに武器を売ることで国力を増強、見返りとして、エネルギー資源や小麦などをロシアから手にしています。
大国ロシアとの取引が順調な今、かつての外貨獲得手段であった海産物輸出は端金に過ぎないかもしれません。それでも、国力増強のためには、海産物輸出を続けるのではないでしょうか」(前同)
日本国民が日常生活で口にするシジミ汁。それが“実は北朝鮮産”、なんてこともあるかもしれない……。
辺真一
東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。『もしも南北統一したら』(ワニブックスPLUS新書)など著書多数。