■「病気」の可能性と周囲の対処法 ペナルティは有効か

 注意しても、当人はなかなかなおしてくれない遅刻グセ。「病気」の可能性について、前出のゆうき医師が解説する。

「先ほど遅刻グセのある方は計画能力が低いという話をしましたが、いわゆるADHD(注意欠如・多動症)の方は、この傾向が非常に強くなります。ADHDかどうかを完全に診断をするためには、診断ができる心療内科を受診する必要があります。

 治療としては薬物治療や心理療法があります。完全になおる、とは言い切れませんが、症状が軽くなったり、少しでも遅刻しづらくなったり、という変化はあると考えられます」(ゆうき医師)

 ではもし当人がADHDであるなら、周囲は諦めるしかないのか。あるいは罰則(ペナルティ)をもうけたり、注意をしたりすることによって、改善につながるものなのか。

「周囲が我慢する必要はなく、むしろ受診をすすめたり、遅刻しそうなときは直前に何度も連絡しておいたりする、などの働きかけで改善する可能性はあります」(前同)

「遅刻したら都度都度注意することも大切です」と、ゆうき医師は続ける。

「大目に見ていると、“あ、この相手は遅刻しても許されるんだ”と思って、遅刻が増えるリスクもあります。またペナルティをもうけるのも有効。”今度遅刻したら〇〇をおごってね”など言っておくと、一定の抑止力になります」(同)

 しかし、待たされた人の遅刻された分の時間は戻らない。その“損失”を最小限にすべく、周囲ができることは何かあるのだろうか。

「たとえばですが、連絡を頻繁にする、または“12時待ち合わせだから、11時に家を出てね!”など、計画のお手伝いをしてあげるのは有効だと思います。もし、次の時間などが明確に決まっていないなら、カフェや別の場所などに行き、着いたら連絡してもらうようにお願いするのも一つの手です。

 自分自身が時間の有効活用ができれば、相手へのイライラも減ります。また相手が来てから自分たちも行くことで、“待たされる”という感覚を味わわせることができます。それによって少しだけ変わるかもしれません」(同)

 とはいえ、プライベートならまだしも時間に追われるビジネスシーンにおいて、周囲にそんな余裕がないことも多いだろう。社会生活を送るうえで、遅刻グセのメリットは何ひとつないことだけは確かである。

ゆうきゆう 
精神科医・マンガ原作者。
ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックグループ総院長。
東京大学医学部卒業。医師業のかたわら心理学系サイトの運営、書籍執筆なども手がける。
シリーズ累計三〇〇万部を超える『マンガでわかる心療内科』(少年画報社)や
Jam氏との共著『マンガ版 ちょっとだけ・こっそり・素早く「言い返す」技術』(三笠書房)など
マンガ原作、著書が多数ある。
ゆうきゆう公式HP:https://sinri.net/
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ゆうメンタルクリニック:https://yuik.net
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