街中を颯爽と走り抜けていく自転車――。便利で楽しい乗り物である一方で、トラブルも絶えない。
「2023年までの過去5年間において、自転車乗車中の事故で死亡したのは全国で1898人。多くは頭部を損傷したことが原因で亡くなっています」(全国紙社会部記者)
現に、事故に遭遇して亡くなった人のうち1780人が自転車乗車中にヘルメット未着用だったと報告されている。
「頭部を損傷するような事故では、ヘルメットを着けていない人の方が、着用者よりも死亡する割合が1.5倍は高いと言われています。昨年4月1日から施行された改正道路交通法で、自転車乗車中のヘルメット着用が努力義務化されましたが、まだまだ自転車利用者のヘルメット着用率は低いのが実情です」(前同)
そんな中、警察庁が発表した自転車乗車時のヘルメット着用率で圧倒的な好成績を収めた県がある。
「愛媛県です。全国平均17.0%の中、愛媛県民のヘルメット着用率は69.3%。2位の大分県民のヘルメット着用率は48.3%ですから、ぶっちぎりの1位ですよね」(同)
愛媛県民はなぜ、自転車に乗る際にヘルメットを必ず被るのか――。弊サイトは愛媛県の担当者に話を聞いた。
「2013年の7月から愛媛県では、自転車の安全利用促進条例を施行しました。当時は全国に先駆けて自転車利用者の責務という形で、ヘルメットの着用を条例で義務化しています」
しかし、この条例に罰則規定はなく、強制力を伴うものでもない。条例が施行された直後は、自転車乗車時の住民のヘルメット着用率も大きく跳ね上がることはなかったそうだ。
「大きく影響したのは、14年に県内で自転車乗車中の高校生が亡くなる事故が相次いだことです。残念ながら2人の学生が亡くなりました。翌年からは県立高校すべてで、自転車乗車時のヘルメットの着用が校則で義務化。17年度までには県内の私立高校も含め全高校で、自転車乗車時のヘルメットの着用が校則に記載されるまでになりました」(前同)