日に焼けた精悍な表情からは、メダリストとしての風格が漂い、記者を見つめる視線は真っ直ぐで鋭い。9月13日、東京都・千代田区の商業施設内に設けられた会見場へ姿を見せたのはトヨタ自動車に所属する、パリパラリンピック男子マラソン、車いすのクラスで銅メダリストの鈴木朋樹選手(30)だ。

 2021年に開催されたパラ東京大会に続き、2大会連続での出場となったパラパリ五輪を鈴木選手はどの様に捉えたのか。

「個人競技では初めてのメダル獲得。コースの中には石畳の通りもあり非常にサバイバルなマラソンコースでしたが、メダルという結果が出て凄く嬉しかったです」(鈴木選手)

 また、今大会はコロナ禍で行なわれた前回大会とは大きな違いを感じたという。

「有観客で経験する初めてのパラリンピック。パリ市民からの声援はめちゃくちゃ大きかったです。その反面、東京大会が無観客で行なわれたことが余計残念に感じられました」(前同)

 盛り上がりの背景には、パラアスリートへ向けられる視線の変化が大きく影響しているようだ。

「東京大会以降、パラスポーツへの理解が社会の中で大きく進んできたという印象です。報道の仕方も含めて“可哀想な物を見る”という視点から、“スポーツを見る”という視点に変化しているようにも感じます。

 しかしながら、オリンピックと比べると注目度はまだまだ低い。東京大会が有観客で行なわれていたら、パリ大会の日本国内での注目度ももっと高かったのかなと感じますね」(同)

 現に、パラパリ五輪期間中の9月1日には、車いすテニスで金メダルを獲得した小田凱人選手(18)がX(旧ツイッター)上へ、《試合はあるけどテレビ放送ないらしいです。多分試合は日本時間日曜日のゴールデンタイム。なんのためにメディアに出て、演出してきたか分かんなくなりそうだけど、これが現実 とりあえず試合で魅(み)せます》と投稿。トップアスリートの試合ですら地上波テレビでは生中継されないのがパラスポーツの実情だ。

取材に答える鈴木選手  撮影/編集部

 だからこそ、「結果を出すことが大切だ」と鈴木朋樹選手は話す。

「メダルを取ればパラアスリートへの見方も変わる。4年後のパラロス大会に出場すれば、メダリストとして挑戦を受ける立場になる。プレッシャーは今大会よりも掛かるでしょうけど、より良い色のメダルを目指せれば」(同)