アメリカ海洋大気庁は先日、2024年8月の世界の気温が過去最高になったと発表した。気象庁の予報によれば、10月中頃まで全国的に気温は平年より高いとのこと。長い残暑に気が滅入る日々が続きそうだが、9月下旬には秋雨前線による大雨で気温が下がり、ようやく秋の気配も見えてきそうだ。

 こうしたなか外食産業はというと、早くもすっかり秋気分だ。

「今年も、秋の定番となる“月見メニュー”が続々と登場。マクドナルドが元祖とされる『月見バーガー』はケンタッキーフライドチキン、ロッテリア、ウェンディーズ・ファーストキッチンなども展開しています」(全国紙経済部記者)

各社“月見メニュー”をプッシュしている ※撮影/編集部

 月見メニューの競争は年々激化しており、この時期はファストフードチェーン店の間では「月見商戦」とも呼ばれている。

「24年はハンバーグレストランのびっくりドンキーが8月28日から『月見フェア』を開催し、月見商戦に参入。22年にはモスバーガーやウェンディーズ・ファーストキッチン、コメダ珈琲が、23年にはバーガーキングが参入するなど、ここ数年で急速に過熱している印象です」(前同)

“普段は季節限定メニューに興味はないが、月見バーガーは毎年必ず食べる”という人も珍しくないほど、月見メニューは日本人にとって秋の定番となっているが、いったいなぜこれほど人気なのだろうか。

 小売・サービス業界に詳しい経営コンサルタントの岩崎剛幸氏が、弊サイトの取材に対して説明する。

「まず、お月見は平安時代頃から続く日本の伝統的な風習。加えて、日本人はたまごが大好きなんです。一人当たりの年間鶏卵消費量で日本はメキシコに次ぐ世界2位。キユーピーが発表した『たまご白書2023』でも、9割近くが“たまごが好き”と回答しています。

 1991年にマクドナルドが月見バーガーを発売して大ヒットし、今日に至るわけですが、当時の開発エピソードによれば、“どんな食材を挟んだハンバーガーを食べたいか?”というアンケートの結果で“たまご”の回答が一番多かったことから誕生したそうで、月見バーガーが売れたのも必然だったと思われます」(岩崎氏)

 日本人が慣れ親しんだ風習にちなんで、日本人が大好きな食材のメニューを投入する。なるほど、定番となるわけだ。