長い残暑もようやく終わりを迎え、木々が赤く色づく秋が到来する。この季節にぜひオススメしたいのが、初心者でも気軽に楽しめ、健康に良い“低山登山”だ。

 NHK『ラジオ深夜便』で「旅の達人 低い山を目指せ!」のコーナーを長らく担当し、低山登山に関する著書も多く持つ低山トラベラーの大内征氏は、その魅力をこう語る。

「低山登山の魅力は、楽しみ方の間口が広いことです。自然の中を歩く爽快感はもちろんのこと、人が暮らせる高さなので、山自体に歴史や神話、文化があって、それを探求する面白さもあります。“ブラタモリの山版”みたいなものですね」

 また、低い山だからこその絶景も楽しめるという。

「実は低山のほうが、思わぬ絶景に巡り合えます。海沿いなら他にさえぎるもののない大海原を見渡し、市街地近くなら、街並みを違った角度から眺められます。その街のスケール感や、町内放送などの生活音を目や耳で感じ取れて、新鮮な気持ちになれます」(前同)

 では、何を基準に登る山を決めたらよいのだろう。

「登山経験が少ない人なら(1)標高1000メートル以下を目安に、(2)公共交通またはマイカーで行ける駐車場があってアクセスがいい、(3)登山客が多い人気の山という3つの点から登る山を選ぶのがオススメです。体力的にも無理なく、安全に登山の素晴らしさを味わえると思います」(同) 

 そこで今回は大内氏協力のもと、日帰りで楽しめる各都道府県の1000メートル級までの「名低山」を選出。

 海を中心とした絶景、美しい草花、知的好奇心を満たす伝説や歴史、そして下山後に味わえる地元グルメなど、個性的な魅力にあふれた“全国47名低山”を紹介していこう。

■日本の夕陽百選にも選ばれた美しい山容の青葉山

 まずは東日本からスタート。

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 雄大な大自然で知られる北海道地方で、これからの季節にピッタリなのが、稚内から西へ60キロの沖に浮かぶ礼文島の礼文岳だ。

 大内氏は、その魅力を、こう語る。

「頂上からは360度さえぎるものがないスーパー絶景で、海に浮かぶ利尻富士も堪能できます」

 次は東北地区。イチ推しは、秋田県能代市にある七座山。

「7つの峰をグルリと歩く、プチ縦走ができる山です。全長7キロほどで、子連れでも大丈夫。蓑座展望台から見る、蛇行する米代川の川筋は見事です」(前同)

 下山後は、紅葉の名所でもある自然公園『きみまち阪』にも立ち寄りたい。

「この珍しい名称は、明治天皇が東北巡幸なさった際、この地で皇后が陛下に手紙を出し、到着をお持ちになったというエピソードから、命名されたそうです」(地元紙記者)

 北陸地方からは、「若狭富士」として地元で愛される、福井県高浜町および京都府舞鶴市にまたがる青葉山を紹介したい。

「山容が美しい山で、青葉山に落ちる夕日は『日本の夕陽百選』にも選ばれています。山頂から見る内浦湾の美しさには息を飲むほど。登山コースも豊富で、東峰から西峰の縦走では、鎖場もあってスリルも味わえます」(登山ライター)

 一方、登山者憧れの名峰が名を連ねるのが甲信越地方だ。中でも、日本百名山のうち、29座と全国最多を誇るのが長野県だ。そんな“登山県”で登りたい低山は、意外にも観光地・軽井沢にある。

「軽井沢という避暑地にありながら、手軽に登れるのが離山です。近くに多くの飲食店やアウトレットモールもあるので、観光と山歩きを同時にできる。登山がお好きな今上天皇が初めて登られた山、としても知られています」(前出の大内氏)