■山登りでそろえておくべき5つの装備

 今すぐ登りたくなる、各地の魅力的な低山。

 だが、標高で甘く見るのは危険だ。

「誤解されがちですが、危険な目に遭いやすいのは高山より低山です。高い山は体力的にはハードでも、登山道はハッキリしていて分かりやすい。一方、低い山は道が整備されていなかったり、さまざまな用途の道があったりと、意外と迷いやすいんです」(前同)

 低山であっても、自然の中に身を置くことに変わりはない。山登り初心者がそろえるべき装備は何か。

 必ずそろえたいのが、(1)30リットル程度の容量があるザック(リュックサック)、(2)速乾性の高い服と雨風を防ぐジャケット、(3)自分の足にフィットするトレッキングシューズ、(4)暗くなったときに使うヘッドライト、(5)登山用GPS地図アプリを入れたスマホ、の5つだ。

 大内氏は、両手を自由にしておく重要性を指摘する。

「山を登る際、大切なのは不測の事態に対応できるよう、両手を空けておくこと。そのため、必要な道具はザックに入れて背負います。

 また、気化熱が体温を奪うため、体が濡れることに常に気を遣う必要がある。登山で濡れるのは、汗と雨。すぐに乾く服と、風雨を防ぐジャケットは必須です」

 服について、初心者にまずオススメしたいのは、日本のアウトドアブランド『モンベル』だ。

「素材や縫製がしっかりしていながら、値段も手頃でコスパがいい。入門用として、低価格でアウトドア衣類を多く出している『ワークマン』で買うのも手です。耐久性は劣りますが、基本的な機能は備えている。実際に着て何度か山を登れば、次に買う高スペック製品の参考になるはずです」(前同)

 シューズに関しては、靴の中が濡れない防水性と、滑らないソール(靴底)が重要だ。

「舗装されていない道を歩くのが前提ですから、自分の足に合った登山靴を選ぶのが何より大切です。ハイカット、ローカットは好みでいい。むしろ、つま先が当たって痛くなるのを避けるため、サイズは通常より0・5~1センチ大きめが目安。メーカーごとに微妙にサイズが違うので、ショップで試しばきしてください」(同)

 ヘッドライトと地図アプリは、もしもの際に命を守る重要なものだ。

「山は日が落ちるのが早く、一気に暗くなる。山登りに慣れていないと、下山時間が遅れたりすることが多いので、ヘッドライトを必ず持っていってください。両手を空けておく意味でも、ヘッドライトがベストです。あとは、『ヤマレコ』や『YAMAP』 など、スマホで使える登山用の地図アプリ。登山ルートと自分の位置が一目で分かるので、もしものときにも安心です」(同)

 これ以外でも、疲れや熱中症対策に塩タブレットや、寒さ対策にロングスリーブの防寒着、ヘッドライトやスマホの予備電池もザックに入れておくとベスト。安全のため、しっかり準備をしてほしい。

 必要な装備を揃えたうえで、楽しく、安全に秋の低山登山挑んでもらいたい。

大内征(おおうち・せい)
1972年生まれ、宮城県出身。低山トラベラー、山旅文筆家。歴史や文化をたどりながら、日本各地の低山や里山を訪ねる歩き旅をライフワークとする。知的好奇心を刺激する“山里歩き旅”の楽しさを様々な形で伝えている。2016年4月から現在まで、NHKラジオ深夜便「旅の達人~低い山を目指せ!」を担当している。