巨大な恐竜が夜更けの博物館をノッシノッシと練り歩く――。映画の中の話ではない。“人々が寝静まった後、恐竜たちが歩き出したら楽しいだろうな”という夢を実現させたのが、株式会社ON-ART(オンアート)だ。

 深夜に鬼や妖怪が徘徊する“百鬼夜行”ならぬ『恐竜大夜行』と題したナイトパレードが、9月27日と28日の2日間、東京国立博物館の中庭で開催される。ティラノサウルスやステゴサウルス、トリケラトプスなど巨大な恐竜約20頭が一堂に会するイベントだ。

 これはON-ART社が開発した、自立歩行恐竜型メカニカルスーツ「DINO-TECHNE(ディノテクニ)」によるリアル恐竜プロジェクト「DINO-A-LIVE」の特別企画。同プロジェクトはこれまでにも国内5大都市アリーナツアーや福井県恐竜博物館でのロングラン公演、さらには海外でも反響を呼んできたが、屋外は初となる。

 そんな「DINO-A-LIVE」の恐竜たちは、2022年に東京国立博物館が“ミライの宝物”をテーマに開催した「150年後の国宝展」企業部門で、“150年後まで伝えたい現代の国宝候補”に選ばれたほどの精巧さとアイデアのユニークさを誇る。この度、『恐竜大夜行』を開催するON-ART社の代表取締役・金丸賀也氏に開催への想いを聞いた。

 まず、恐竜型のメカニカルスーツを開発したきっかけについて、金丸氏は「単純に“恐竜に会いたい”という気持ちが大きかったんです」と笑顔を見せる。恐竜に関する研究は数多あるし、化石もあるが、情報だけでは全体像はなかなか掴みづらい。リアルな恐竜はどれだけの大きさで、どんなふうに歩くのかといったシンプルな発想がすべての始まりだった。

「ON-ART社は普段造形会社として博物館の企画展などにリアルな造形や壁画を納品しています。私たちの仕事でもっとたくさんの方に博物館の企画展へ来てもらうにはどうすればよいか考えていた頃に、映画『ジュラシック・パーク』(1993年)が公開された。映画内で、登場人物たちがブラキオサウルスに遭遇するあの有名なシーンを見て、“博物館に人を呼び寄せるにはこれだ!”と思ったのです」(金丸氏)