■謎を解明するべく店を直撃!そこで語られた真相とは

 その謎に迫るべく、記者は、東京・西東京市の「エフェリフケバブ (EFELIF KEBAB)ひばりヶ丘店」で350円のケバブサンド(M)を購入。店内で食べることにした。

 まず目を引くのが、そのボリューム。目の前に現れた商品は「これが本当にMサイズなの?」という圧倒的ボリューム感で、サービスとしてポテトまで乗っている。昼過ぎに食べたが、夕飯時になってもまったくお腹が空かなかったほどだ。

 味のほうも申し分ない。口の中に広がっていく肉汁とソースの香りには“本格派”という言葉がぴったり当てはまる。おまけでジュースが1本ついてくるのもうれしい限り。

サービスもボリュームも満載な「エフェリフケバブ (EFELIF KEBAB)」のケバブサンド ※撮影/編集部
サービスもボリュームも満載な「エフェリフケバブ (EFELIF KEBAB)」のケバブサンド  ※撮影/編集部

 ケバブを堪能した後は、さっそくいくつかの疑問をオーナーに直撃すると、同店のオーナー・トゥルハン氏は、驚くべきことを口にした。

 チェーン店のように見えていたケバブ屋の経営資本は、実はてんでバラバラ。それどころか、水面下では“仁義なきケバブ戦争”が勃発しているというのだ。

「それぞれ店のオーナーは別の人なんです。マクドナルドやファミリーマートみたいなところとは全然違いますね」

 さらに、疑問の一つである看板などのデザイン酷似問題を聞くと……、

「看板が似てる? それは理由があって、どの店もオーナーや店長は外国人じゃないですか。だから日本語のフォントとか漢字が分からないんですよ。パソコンでデザインするような知識もないですし……。だから大抵はライバル店の看板の写メを撮って、“これと同じように”って業者にお願いしているんです」(トゥルハン氏)

 なんと、そんな裏事情があったとは……。

 トゥルハン氏が経営する「エフェリフケバブ」は、ひばりヶ丘店のほかに大久保店、白楽駅前が存在。新たに中野店もオープンする。

 実際にはケバブの販売価格も家賃や訪問客数によって微妙に違っており、350円を売りにするひばりヶ丘店も近日中に値上げする予定だという(それでもコスパは最高だが)。

 事実、これまで抱いていた疑問の通り、今回直撃した「エフェリフケバブ」とよく似た「エフェケバブ (EFE KEBAB)」というケバブ屋チェーンも池袋・新宿4丁目・阿佐ヶ谷・荻窪などに存在し、その一部店舗では350円という価格を前面に打ち出している。

 ほかにも「レイスケバブ(REIS KEBAB)新宿歌舞伎町店」、「同・高田馬場店」、「ケバブショップ(KEBAB SHOP)野方店」、「リーダーケバブ(Lider Kebab)東長崎店」などでケバブサンドの350円販売が確認されている。これでは情報が錯綜するのも無理はない。

「うちはソースもパンも全部を自分たちで作っているし、味もボリュームも自信あります。実際に店頭で作っているのは学生も多いんだけど、最初に私が全部やり方を教えるんですよ。だからエフェリフケバブに関しては、どこのお店でも美味しさは変わらないはずです」(トゥルハン氏)

 店舗が拡大しているのは、ビジネスが成功しているということ。その秘訣をトゥルハン氏に尋ねてみると、「真面目に働いているから……かな?」とポツリ。

「日本人は真面目に働く人を応援してくれますよね。そういう姿を見られている気がします。新しくお店をオープンするときの手続きとかでも助けられましたし、お店でケバブを買って応援してくれる人たちも多い。これからも真面目に、ボリュームたっぷりのケバブを作りますよ!」(トゥルハン氏)

 安くて美味しいケバブの世界は、意外にも奥深いものだった。自分に合った店を探してみるのも一興かもしれない。

田沢竜次(たざわ・りゅうじ)
元祖B級グルメライターとして活躍。映画評、書評、60~70年代B級カルチャーなどにも精通する。著書に『B級グルメ大当りガイド』『ニッポン映画戦後50年』など。