2021年頃から「第5次ドーナツブーム」が起こっていると言われるスイーツ業界。その主役となっているのはフワフワしっとりした食感の生ドーナツと呼ばれる商品だ。福岡発の『I'm donut?(アイムドーナツ)』を筆頭に生ドーナツ専門店も次々にオープンしている。また、近年の韓国ブームにともない、韓国発祥のドーナツも脚光を浴びることが多い。

 日本におけるドーナツブームの火付け役となったのは『ミスタードーナツ』。日本国内におけるドーナツ「第1次ブーム」は1971年に同社がアメリカから上陸したのがきっかけだ。そんな『ミスタードーナツ』は03年に人気商品『ポン・デ・リング』(162円・税込み、テイクアウト時/以下同)を発売。第2次ドーナツブームを巻き起こした。

「ミスタードーナツはここ数年、右肩上がりで売り上げを伸ばしています。運営会社であるダスキンの23年3月期の通期決算では、ミスタードーナツが中心となるフードグループの売上高は488.8億円で前期と比べて11.6%増。そして24年3月期は、売上高584.4億円で前期比19.6%増と、めざましい勢いがあります」(全国紙経済部記者)

 しかし、20年頃まではかなりの低迷状態だったという。

「フードグループの売上高は07年に553億円あったのが、コロナ前の19年には354億円にまで落ち込み、とくに14年~17年は4年連続で営業赤字となるなど苦戦が続いていた。その背景には第3次ドーナツブームを起こした06年上陸の『クリスピー・クリーム・ドーナツ』や、15年頃から登場した“コンビニドーナツ”といった競合の存在がありました。さらに健康志向の高まりも追い打ちをかけたと指摘されています」(前同)

 ミスタードーナツ復活のきっかけは、コロナ禍で高まったテイクアウト需要だったが、それだけではないという。

「一時期は不定期で“100円セール”を実施するなど価格で競合と勝負しようとしていたものの、17年にはその方針を転換。付加価値の高い商品をつくり続けることで“ドーナツ屋”としてのブランディングを改めて確立させたことも大きいですね。

 近年は原材料費や光熱費の高騰などの影響で商品の値上げが続いている。たとえば『フレンチクルーラー』は20年3月には118円(税込み、テイクアウト時/以下同)だったのが、24年7月から162円と50円近く上昇しているがそれでも客離れは起きておらず、業績は好調。高付加価値戦略が成功しているのでしょう」(同)