■LINEの短文はポケベルへの先祖返り

 しかし栄華は短く、加入者こそ96年に1077万件で最大となったものの、PHSに覇権を奪われてしまう。読みやすさと引き換えに、読解する楽しみが奪われてしまったのだ。

「平成初期は女子高生のブルセラや援助交際のブーム期でもあったので、ポケベルによって若者の性が拡散された面もあるでしょう。また、男子の間では、血気盛んなチーム文化が花盛りだった。ポケベルは集合をかけるのに必須のアイテム。暴力沙汰に利用された事実も見逃せません」

 時代の徒花となったかに思えるポケベルだが、木村氏は「今こそ再評価するべきだ」と口調を強める。

「最近の若者は、LINEの文章も極端に短くする傾向がある。ちょっと長く文字を打つと“オヤジ構文”などと言われるくらいですからね。これはポケベルへの先祖返りだと考えていい。平成初期の“ポケベルイズム”は令和の世にあっても生き続けているんです」

 最後に木村氏は、ポケベル直撃世代に向けた“秘技”を教えてくれた。

「お薦めなのは、スナックでアラフィフ世代のママからLINEのIDを聞き出し、≪14106≫と送ること。最初は何のことかわからないかもしれませんが、ニヤリと笑って意気投合するはずです。“ママ、今夜はオールしちゃう?”なんて口説いているうちに、一気に“あの頃”へ戻れるんじゃないでしょうか」

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年生まれ、宮城県出身。株式、恋愛、遊びなどトレンドを読み解くコラムニストとして活躍。『月刊ゴルフダイジェスト』『アルバ』などの専門誌で連載のほか、原作を担当するコミック『夏蜜柑颯斗のラウンドレッスン』発売中。