■パソコンは猫が“かまってアピール”をする絶好の場所

 また、河内氏によれば「猫の中には飼い主さんを親のように思っている“甘えん坊”も多い」とのこと。

洗濯機の上の猫ちゃん ※画像/ピンズバNEWS編集部
※画像/編集部

「飼い主さんにかまってほしくて、ついていってしまうケースが考えられます。猫がトイレなどに入ってくると、飼い主さんは、驚いたり注意したり、大きなリアクションを取りますよね。それが、“かまってくれた!”という成功体験になって、繰り返してしまうんです」

 飼い主にかまってほしくて猫がついてくるのは、トイレやお風呂だけではない。

「物陰に隠れて、そこから手を出したり顔を出したりするのは、狩りの真似事をして楽しんでいるんです。その姿を見た飼い主さんのリアクションを楽しんでいると考えられています。飼い主さんの視線が向けられている、パソコンの前や鏡の前は、猫が“かまってアピール”をする絶好の場所なんです」

 最近の傾向では、コロナ禍以降にリモートワークが増えたことでパソコンの前に居座る猫が増えたという。

パソコンの下にいる猫ちゃん ※画像/ピンズバNEWS編集部
※画像/編集部

「猫にとって、常に動いているパソコンの画面は興味の対象になります。マウスのカーソルや、リモート会議の人の動きや声が気になって、パソコンの前に居座るケースも考えらえます。特に、最近は、動くターゲットをタッチして遊ぶ“猫じゃらしアプリ”も出ていて、より、猫が、パソコンやスマホの画面に興味を持つようになりました」

 なんともかわいらしいが、仕事が手につかないのも困る……では、そういった猫の謎行動に対して、飼い主はどうすればよいのか?

「基本は好きにさせてあげましょう。ライオン以外のネコ科の動物は単独行動が基本。自分のペースで行動します。また、犬は、飼い主さんと主従関係を築きますが、猫は飼い主さんを“自分の縄張り内にいる、気の許せる同居人”くらいに思っていることが多いんです。そんな飼い主さんから、無理に行動を制限されるとストレスを感じる可能性があります。中には、“分離不安症”といって、飼い主さんと離れるとパニックを起こす猫もいます。あまりに離れるのを嫌がったら、一度、行動診療科がある動物病院に相談に行くのも手です」

 のんびりとお風呂に入りたい日もあるが、そんなときは?

「猫に、ひとりで遊べるおもちゃを与えるのが一番簡単な方法です。例えば、おもちゃをいじるとおやつが出てくるもの。猫じゃらしが電動で回っているものなど、飼い主さんについていくよりも楽しいと思えるものがあれば、猫はそちらを優先します。中には、ガチャガチャのカプセルに穴をあけて、その中におやつを入れて、転がるとおやつがこぼれるようなおもちゃを自作している飼い主さんもいるので、ぜひ!」

 これらを参考に、猫と適度な距離感を保ってみてはいかがでしょうか。

河内由紀(かわうち・ゆうき)
獣医師。日本獣医動物行動学研究会所属。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。ヒューマンアカデミー東京校ペットヘルスケア講師を経て現在の病院に勤務。