■お中元に100万円かかることも
大の里が9月の秋場所で獲得した懸賞金は277本。15日間だけで831万円も稼いでいる計算だ。
「今年1~9月までの収入を計算すると、懸賞金4362万円、優勝賞金2000万円(5月と9月の2回分)、三賞賞金1600万円(8回分)、給料1460万円となり、24歳にして、年収1億円を突破することは確実です」(前出の相撲担当記者)
まさに、“土俵には金が埋まっている”力士の世界。だが、出世に応じて、「必要経費」も増えるという。
前出の武田氏が続ける。
「まず、幕下から新十両に昇進した際、必要となるのが明荷(あけに)です。化粧廻しや締め込み、浴衣や小物類などを収納するつづらで、1つ20万円程だと思いますが、同期生がお金を出し合って贈るならわしがあります。加えて、紋付袴が約50万円~、絹の締め込みが100万円程。これらは、所属する相撲部屋や後援会から贈呈されることが多いです」
十両からは、土俵入りの際の化粧まわしも必要となるが、
「装飾にもよりますが、製作費100万円からというのが相場でしょう。地元や母校の有志などから贈られることが多いです。人気力士を多く輩出する埼玉栄高校のオレンジの化粧まわしなどは、大相撲中継で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか」(前同)
さらに、幕内に上がると出費はますます増大。
「十両から幕内に上がると、“染抜き”といって、自身の四股名を入れた、派手な色柄の着物の着用が許されます。こちらも約100万円~が相場で、贈呈されることが多いです」(同)
また、幕内以上の力士は5月場所になるとお中元を贈る習慣がある。
「四股名の入った浴衣地の反物を友人やお世話になっている方々に贈るのですが、100人以上に贈ることもザラ。白地に紺色などシンプルなものなら一反3000円程ですが、最近はカラフルなものが多いので、一反1万円ということも。贈り先の多い人気力士は、企業に協賛してもらって、反物を作るケースも多く、横綱・白鵬はANAや高島屋とコラボ。音羽山部屋のすかいらーく柄浴衣も話題になりました」(同)
これらに加えて、大関昇進ともなると、当然、出世に応じた出費がある。
「大関に昇進すると、一門の行司さんに四股名入りの装束を贈る習慣があります。装束の値段は、行司の格によっても異なりますが、一式30~120万円が相場です」(同)
ガッポリ稼いで、ガッツリ使う――。
それが力士の流儀なのだ。
武田葉月(たけだ・はづき)
ノンフィクションライター。山形県山形市出身。清泉女子大学文学部出身。出版社勤務を経て、現職へ。大相撲、アマチュア相撲、世界相撲など、おもに相撲の世界を中心に取材、執筆中。著書に、『寺尾常史』『大相撲 想い出の名力士たち』『インタビュー ザ・大関 運と人を味方につける』(すべて双葉社)、『横綱』『ドルジ 横綱・朝青龍の素顔』(ともに講談社)などがある。