持ち家か賃貸かどちらが得か――。住宅に関して、昭和の時代から繰り広げられる永遠のテーマだが、最近では“第3の選択肢”が注目されている

「定年退職するまでの現役時代を賃貸で過ごし、退職金をもらった段階で、住宅をローンではなく一括で購入することを考える人が増えています。持ち家派と賃貸派の折衷案とでもいうべき方法で、持ち家にも賃貸にもないメリットがあり、今後、増えることが想定されています」(不動産会社営業担当)

 持ち家派と賃貸派と定年後に持ち家一括購入派。それぞれのメリットとデメリットを改めて考察していきたい。

 まずは持ち家から。

「持ち家の最大のメリットは資産になること。賃貸では、100年家賃を払っても自分の資産にはなりません。また、ローン残高に対して0.7%の住宅ローン控除など税控除が受けられたり、依然として変動金利が1%を切る今、税控除を計算に入れると実質、ローン金利はあってないようなものです」(前同)

 また、賃貸派が見逃しがちなのが、団体信用生命保険だ。

「住宅ローンには団体信用生命保険への加入が必須になって、契約者が病気やケガでローンが払えなくなったときに、残債と同額の保険金が支払われます。家族に残す遺産を考えても有効な住宅選択と言えるでしょう」(前同)

 さらに一戸建てにせよマンションにせよ、賃貸物件に比べて設備が充実しているのが、持ち家の魅力であるが、デメリットもある。

「2023年、東京23区で発売された新築マンションの1戸あたりの平均価格は1億1483万円と、初めて1億円を突破。また、2024年に入って、一部の金融機関で住宅ローンの金利が引き上げられており、買い時とはいえない局面を迎えていますね」(前同)

 一方、賃貸派はどうか。

「賃貸のメリットはとにかく身軽なこと。結婚や転勤、自身の生活に合わせて引っ越しも容易です。これまでは毎月のローン支払い額と家賃が同じなら買ったほうが良いという論調もありましたが、マンション価格が高騰し、住宅ローンの金利が上がりつつある今、出費を押さえるのに賃貸というのは有効な手段になっています。デメリットとされる“資産にならない問題”も前述の状況では小さくなっていると言えるでしょう。ただ、高齢になると賃貸物件を借りにくくなるというのもデメリットとしてあります」(前同)