■気になるギャラの金額は

 一日警察署長イベントには、交通安全運動や特殊詐欺防止の呼びかけなど、地域住民に向けたアピールという意味合いがある。著名なタレントを起用することによって、テレビをはじめ各種メディアに取り上げてもらえるため、一般の人々により広く認知してもらえるというのだ。

 一方で、起用されるタレント側にも大きなメリットがあるという。

「一日署長を務めると、感謝状をもらえます。それは、前科前歴がないという証明になるんです。芸能界では、クリーンなイメージが求められますから、起用してほしいと思うタレントも多いようです」

 一日署長としての拘束時間は半日程度。警察署の中で点検を行い、各課をまわると、その後パレードなどの外活動を行う。そして最後に感謝状をもらって終了というスケジュールだ。

 では、そのギャラ事情はどうなのか。

「ギャラというものはありません。ただ、お車代として1万円が支払われる場合もあります。加えて、警察の外郭団体(警察官友の会やや交通安全協会など)から寄付という形でもお金を渡しますが、多くて3万円ほど。人によっては1万円という人もいるので、ボランティア活動に近いです」

 最後に、一日署長になれば、警察の一員として“一日権限”も手にすることができるのだろうか。

「残念ながら、警察官が持つような権限はもらえません。しかし、署長扱いではあるので、その警察署の署長と同じ階級を与えられます。署長は、警視か警視正なので、胸には本物同様に、その階級章がつけられます」

 これら裏事情を知ったうえで、一日署長の姿を見てみるのも、また一興かもしれない。

小川泰平(おがわ・たいへい)
1980年4月から2009年12月まで神奈川県警察の警察官を務め、警察局長賞や警察本部長賞などを受賞。現在は、犯罪ジャーナリストとして多数のメディアに出演中。